こちらは気鋭の中国SF作家が
描く、宇宙と科学、過去と未来などを
テーマにした13編を収めた短編集よ。
『三体』の作家さんだな。
すごい作品だと話題になって
いたよな。
こちらも短編ながらどれも
印象深い作品ばかりよ。
表題にもなっている『円』は
秦の時代に人を使ってコンピュータ並みの
計算をする、という話なの。
ええ〜!?
そんな時代に、しかも人を使って!?
まさに壮大な中国の話ってかんじだな。
どんな風に行われたのか気になるぜ!!
『円 劉慈欣短篇集』
劉 慈欣 (著), 大森 望 (翻訳), 泊 功 (翻訳), 齊藤 正高 (翻訳)
ハヤカワ文庫SF
あらすじ
二十年ぶりに生まれ育った炭鉱街へ再びやってきた劉欣(リウ・シン)。
彼の目的は炭鉱を巨大なガス発生装置に変え、新しい産業として生まれ変わらせること。
その手法に現地の作業員たちは反対の声をあげるのだが、とうとうプロジェクト実行の日を迎え…(「地火」)。
秦の始皇帝から「円周率を計算し、五年後には十万桁まで求めよ」と命じられた荊軻(けいか)。
不可能ではと頭を抱えながらも彼が考え出した方法は、三百万の兵を使った人列計算機によるものだった(「円」)。
気鋭の中国SF作家が紡ぎ出す、宇宙と科学、過去と未来を描く壮大な13篇を収めた短編集。
壮大なスケールと驚きに満ちた物語たち
中学時代、長く炭鉱で働いていた父を亡くした劉欣。
父の跡は継がず二十年ぶりに故郷へと戻ってきた彼は、先細りの炭鉱産業を新たなエネルギー資源に変えるプロジェクトを開始。
地下の石炭層に点火し石炭ガスを産出させるというこの方法に、現場の者たちは強く反対します。
しかし、プロジェクトは止まることなく、ついに実行の時を迎えます。
点火とともに巨大な火柱が立ち昇り、まさに成功したと思われたのですが…(「地火」)。
秦王暗殺のためにやってきて捕らえられた学者、荊軻はその能力を軍のために使うように言われます。
そして皇帝は円周率を計算し、期限内に十万桁まで求めるように荊軻へ命じます。
命をかけて考え出した荊軻の方法は「人間計算機」を使うことでした。
入力1、入力2、出力と名をつけた三人の兵に黒と白の旗を一本ずつ持たせ、その旗を上げる条件を示します。
この兵の数を最終的に三百万に増やし、2進法を用いた人間計算機で円周率の計算に挑む荊軻。
果たしてその結果は(「円」)。
まとめ
先細りの炭鉱の町を新たなエネルギー供給源として生まれ変わらせたい。
故郷を思う気持ちから動き出したこのプロジェクトは、人間の予測や可能な手段を軽々と超え、自然の猛威を見せつけてきます。
その地火の荒々しさや熱に、読む者の顔までひりつくようです(「地火」)。
また、秦の始皇帝時代に「人間コンピュータ」を使って膨大な計算をこなすという何ともスケールが大きく豊かな発想に思わず唸ります。
過去、現代、未来そして時空を超えて壮大で驚きの尽きない世界13篇を収録したSF短編集です。
<こんな人におすすめ>
秦の時代に人間コンピューターを用いた計算を描いた話に興味がある
あらゆる時代や空間をまたいだようなスケールの大きなSFを読んでみたい
劉 慈欣のファン
三百万人の兵を使って計算て…
東京ドーム何個分のスペースが
あれば可能なんだ??
そのスケールの大きさも中国らしくていいわよね。
ほかにも過去や現在、神を感じさせる
存在などジャンルも豊かに楽しめる短編集よ。
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