こちらは料金未払い世帯の
水道を止める仕事をしている
市の職員の物語よ。
水道料金未払いか…。
いろんな事情の家がありそうだなあ。
ある世帯はいつ行っても大人が
不在で小学五年生と三年生の
姉妹が出迎えるの。彼女たちから
料金を取り立てることもできず
滞納料金はかさみ続け、とうとう
給水停止を執行するの。
ううむ。職員も仕事だからなあ。
その姉妹は大丈夫なんだろうか。
大人は家に帰ってくるんだよな?
『渇水』河林 満 (著) 角川文庫
あらすじ
市役所水道部の職員である岩切は、水道料金を滞納している世帯を訪問し、集金を呼びかけ、それでも支払われない場合は給水を止める仕事をしている。
三年分滞納している小出家はいつ訪問しても大人の姿が見当たらず、幼い姉妹だけが対応する。
妻に連れられて出ていった自分に娘とその姿を重ねる岩切。
やむなく停水執行の時を迎え、作業を行う岩切と相棒の木田に、帰ってきた姉妹が声をかけた。
「もう、お水止まってしまうの?」。
滞納世帯の給水を停止
小学五年と三年の姉妹の父、小出秀作は家を出たまま帰らず、母親も不在。
水道停止の予告を何度出しても音沙汰もなく、ポストには「すいどうやさんへ みずをとめないでください。かならずおしはらいします。みずをとめないでください。はずかしいことですが、うちはふつうのうちではないのです。」と子供が鉛筆で書いた手紙が入っています。
これを見た岩切は停水を先のばしにしていましたが、滞納が三年分に達し、停水を執行。
そのタイミングで姉妹が現れ、「いくらですか?計算します」と言いますが、岩切は母親が帰ってくるかを姉にたずね、風呂場や洗面器など思いつくかぎりの器に水をためさせた後、改めて水を止めます。
妻とともにもう二週間帰って来ない、もうじき小学生になる自分の娘と姉妹の姿を重ねながら、滞納世帯をまわり給水停止を執行していく岩切。
停水から二日後、岩切が出勤すると警察が来ていました。
停水の件で話を聞きたいとのことですが…。
まとめ
両親不在の小学五年生と三年生の姉妹が暮らす小出家で、三年分の水道料金が滞納。
給水停止を執行された後に姉妹が選んだ道はとても痛ましいものでした。
市役所の職員であり、規則に沿って水道を止めるという仕事をしている岩切は不条理な怒りをぶつけられたり、キレられたりすることも。
幼い姉妹を前に、それでも水を止めなければならない状況に、「東京中の水を止めてみいたいもんだな」と同僚の木田に漏らします。
そして「水と空気と太陽をただにしろ」と総理大臣と駆け引きをするのだと。
命の維持に必要なものが貧困によって供給されなくなる状況に、絶望とやるせなさがひたひたと胸に迫る物語です。
<こんな人におすすめ>
水道を止める仕事をしている市役所職員を描いた物語に興味がある
水道を止められる家庭の様子を描いた話を読んでみたい
水と命をテーマにした物語に関心がある
こ、こんな道を選んで
しまうなんて…・゚・(ノД`)・゚・。
命をつなぐ水を止めるのも
また一人の人間なのよね。
社会の不全と個人の葛藤が
渦巻く、色々と考えさせられる
物語ね。
生田斗真さん主演で映画化も。
映像化でいっそう胸に迫るものがあるのではないでしょうか。
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