こちらは有名な作家を
父親に持つ息子が父の遺作となった
小説を探すという物語よ。
作家かあ。遺作となれば
家族の話を書いていた可能性も
あるよな。その息子とか。
妻子ある父と不倫の末に
生まれた主人公は、父親と
一度も会ったことがないの。
ところが父が亡くなった知らせを受け
遺作の原稿を探すことになるのよ。
会ったこともないのか!?
それじゃ彼のことを書いてある
可能性は低いのかなあ。
主人公もどんな気持ちで原稿を
探していくのか。気になるぜ。
『世界でいちばん透きとおった物語』
杉井 光 (著) 新潮文庫
あらすじ
有名なベストセラー推理作家の宮内彰吾を父に持つ燈真は、母親と二人暮らし。
プレイボーイとしても有名な宮内と母が不倫の末に自分が生まれたため、父と会ったことは一度もない。
突然母が事故で亡くなり茫然としていたところ、校正者だった母と仕事をしていた編集者の霧子さんから、父が亡くなったとの連絡が。
その1ヶ月後、宮内の長男・朋晃から、父親が死ぬ間際に執筆していたと思われる小説について何か知らないかとたずねられ、燈真はその原稿を探すことに。
果たしてその原稿を見つけ出すことができるのか。
交流のなかった父が遺した最後の小説とは
母が亡くなり、ひとりきりの生活にも慣れてきたかと思う頃、霧子さんから、父が亡くなったとの知らせを受けた燈真。
どうするか、の問いかけにこれまで関わってこなかったし、これからも関わるつもりもない、という思いから葬式には出ない、と伝えます。
ところがその1ヶ月後、宮内の息子である朋晃から連絡が入ります。
出版社に集合し、宮内の担当編集者と霧子さんとともに朋晃の話を聞くと、宮内はどうやら「最後の作品」を手がけていたらしい、とのこと。
タイトルは『世界でいちばん透き通った物語』。
しかし原稿が見当たらないため、燈真にも探してほしい、と言います。
自宅をはじめ、宮内が生前関わった人物、場所など霧子さんの助言を受けつつ探す燈真。
ようやく原稿のある場所を見つけ出し、朋晃とともに向かった燈真ですが…。
まとめ
敵意をむき出しにして「相続を主張されても了承しない」とケンカ腰の朋晃。
会ったこともなく、関わりも一切ない父にこちらも何か要求するつもりはない、と考えながらも、父という人間のことが少しでもわかるだろうかと原稿を探す燈真。
何人もの女性と浮名を流し、癌になり、最後は療養院で過ごした父。
女たちに呟いた「人を殺しかけたことがある」という発言。
燈真の家に侵入した者の正体。
あちらこちらに散りばめられた謎が、燈真の調査と霧子の推理で明らかになります。
全てのピースがそろい、ピタリとはまった時。
劇中作と本作の『世界でいちばん透き通った物語』が重なり、新たな驚きを読者にもたらしてくれるのです。
感情を丁寧に描く、感動の物語でありながら、物語全体の精度の高さに言葉を失う衝撃の一冊です。
<こんな人におすすめ>
作家が最後に書いていた作品をめぐる物語を読んでみたい
交流のなかった作家の父親像を、その遺作を探すことで知っていく息子の話に興味がある
杉井 光のファン
オオォォォ(゚ロ゚*)!!
ちょっと!!え!?
もう一度読み直さないと!!
こんなの初めてだぞ!!!
作家が作品に込めた想いは
しっかりと主人公に伝わったのでは
ないかしら。繊細な心理描写に加え
作品全体に対する『仕掛け』に
驚きと感嘆の声が出る物語ね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。