こちらは目の見えない店主が
1日百円でお客さんに依頼された
品を預かる「あずかりやさん」の
第五弾よ。
落ち着いた佇まいの店主が
いい味出してるよな。
今回はどんなものを
預かるんだ?
預かりものもいろいろあるのだけれど
今回はなんと店主が店に入ってきた
強盗と鉢合わせしてしまうの。
ご、強盗だって!?
目の見えない店主はこの危機に
どうやって対処するんだろう。
『あずかりやさん 満天の星』
大山 淳子 (著)ポプラ文庫
あらすじ
東京の下町にひっそりと店を構える「あずかりや」。
この店では一日百円でどんなものでも預かってくれる。
目が見えない店主のもとには様々な預かってほしい「もの」を持ったお客たちがやってくる。
やきそばパンを預ける紳士、母子手帳を持ってきた妊婦。
また預けたものを受け取りに来る客や、時には招かざる客も…。
彼らはものと同時に「思い」を預けることで、自分の心の奥深い部分に潜んでいたものを見つけたり、新たな「気づき」を得る。
「もの」からの視点で「あずかりやさん」店主とそのお客たちを描くシリーズ第五弾。
あずかりやさんに強盗が侵入!?
ぶっ殺してやる、とつぶやきながら街を歩く男。
この男と常に一緒にいるのがこのわたし、万能ナイフです。
看板のない、店らしき建物の格子戸を開け、中へ入ります。
暗い中を手さぐりで進み、和室の茶箪笥から現金を発見。
夢中でポケットに詰め込んでいると、ふと人の気配が。
逃げた方がいい、とナイフの私は思いましたが、店主らしき男は静かに立っています。
ナイフの脅しに店主は動じた様子はなく「お客様ではないのですね?」と話しかける始末。
そこで「あずかりや」の仕事の内容を聞いた男は、店主にあずかりものの入った金庫を開けるように言いますが、店主は静かに、そしてきっぱりと「開けることはできません」と発言します。
ナイフのわたしが店主の頬を傷つけているというのに。
店主に部屋の灯りをつけさせた男は、ここではじめて店主の目が見えないことに気づきます。
男は戸惑いながら「俺の人生が…お前にわかるか」と弱々しくつぶやきました。
すると店主は「お話をうかがいましょう」と言って、あろうことか強盗に入った男のためにハーブティーを淹れ始めたのです。
男の身の上話を聞いた店主は、男が肌身離さず持ち歩いていたわたしの刃の状態を確認し、なんと砥石で丁寧に磨き、ぴかぴかにしてくれました。
そして男のためにオルゴールを聞かせてくれたのです。
色とりどりのはねる音を聴きながらわたしたちは男の人生に思いをめぐらせて…(「金魚」)。
まとめ
目の見えない店主のもとに強盗が押し入るなんて!?とハラハラします。
強盗が持つナイフから見た危険な男の人生は、喜びや満ち足りたものを感じることがなかった世界。
一方の店主は目が見えないながらも何かを手に入れたいという強い欲望もなく、目の前の人と「もの」に手を添え、静かに見守ります。
武器となるか、大切にな役に立つ道具となるか。
思いひとつで「もの」はどんな存在にもなり得る。
そんなことを店主が教えてくれるように感じる、心あたたまる物語。
<こんな人におすすめ>
一日百円で預かる店の店主と客のあたたかなやりとりや、預けるものへの思いを丁寧に描いた物語に興味がある
『あずかりやさん』シリーズのファン
大山 淳子のファン
うお〜 ナイフを突きつけられた
時にはヒヤッとしたぜ。
強盗も店主の静かな佇まいに
つい身の上話をしたく
なっちゃうんだなあ。
そっと寄り添い『聴く』ことが
できる店主だからこそ
閉ざされた心も開くことが
できるのかもしれないわね。
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