こちらは霊魂が取り憑いた
いわくつきのモノを取り扱う
古物商『阿弥陀堂』の店主と従業員、
そしてそれを借りに来る客を描く物語よ。
えええ〜。そんな恐ろしいもの
何のために借りにくるんだよ。
恨みを持つ相手に復讐するために
利用するの。霊の力を使って
苦しめたり死に至らしめたり
することもわるわ。
ひょえええ〜〜
しかし人を呪わば穴二つって
言うしな。何かが起こりそうだぜ…
『死人の口入れ屋』阿泉 来堂 (著)ポプラ文庫
あらすじ
警察を辞め、新たに古物商の阿弥陀堂で働くことになった久瀬宗子。
ここで扱う品物は単なる古物ではなく「忌物(イミモノ)」と呼ばれる、霊魂が取り憑いた物品。
憎しみや恨みを抱えた客にこれらの品を貸し出している。
霊の力を借りて客たちが手に入れたものとは。
霊の憑いた曰く付きの品を貸し出す阿弥陀堂
前職の教育係をしてくれていた日下部の紹介で阿弥陀堂の面接へとやってきた宗子。
警察を辞めた理由を社長の阿弥陀に問われ、正直に話します。
強盗犯が入った現場に向かい、同行した先輩の指示に従わず、階段にいた子供を助けようとした結果、先輩が犯人からの攻撃を防ぎきれず怪我を負ってしまったこと。
問題は、その子供はすでに殺されていたという事実。
霊が見える宗子は同じ状況が再び起こることを怖れ、職場を去ったのでした。
阿弥陀堂の商売は、霊が取り憑いた曰く付きの品を、希望する人物に貸し出すこと。
大枚を出してもその品を、霊を借りたいという客は強い憎しみや恨みを抱えた者たち。
霊が見えるから採用!と話を進められ当惑する宗子の前に現れた依頼人は二十代前半の女性。
彼女の依頼は、姉の婚約者に霊が憑いた指輪を持たせること。
郵便受けの中に見慣れぬ指輪を発見した隼人は、誰かの落し物かととりあえず下駄箱の上に置きます。
婚約者が自殺、彼女の妹に責められ疲れていた隼人は、指輪を拾ったその日から女の幽霊が部屋に現れるようになり、恐怖のどん底へ突き落とされます。
精神的に追い詰められていった隼人は包丁を持ち出し、「これでいいんだろ花代」「すぐ、そっちにいくから…」と刃先を自らの首元に当てようとしたその時、玄関のチャイムが鳴り、見知らぬ男があがりこみます。
その男は「おいレイコ、いい仕事ぶりだったぜ」と古い指輪に話しかけ…。
まとめ
幽霊が取り付いた品物を使って憎む相手を苦しめる。
相手は心当たりのある人物の幽霊であると思いこみ、許しを乞い、恐怖に震え、追い詰められていきます。
「視える」ことで仕事を続けることができなかった宗子にとってはまさに「適所」な職場である阿弥陀堂。
人の恨みを果たす行為に何ら罪悪感を持たない様子の店主とぶつかり合いながらも、人々が抱く行き場のない想いに触れ、この仕事に興味を持ちはじめます。
残酷なのは幽霊よりも生きている人間。
しかしながら気づきを得て、そこからやりなおそうとすることができるのもまた、生きているからこそ。
そんな風に感じられるホラーミステリーです。
<こんな人におすすめ>
幽霊が取り付いた品を希望者に貸し出す店を描いた物語に興味がある
人の恨みと幽霊の作用が人に及ぼす恐怖を描いた話を読んでみたい
阿泉 来堂のファン
店長のキャラ強いな〜。
だからこそチラリと見せる
人間臭さにグッとくるんだよな。
恨みを晴らすという行為は
一方通行な想いから来るもの。
そこに囚われて燻っているよりも
解放されたほうが幸せになれるの
ではないかしら。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。