こちらは総理大臣と息子を描いた
『民王』の続編よ。環境大臣が
新種のウイルスに感染し、陰謀説などが
広まり日本中が大混乱に陥るの。
ありゃ〜 どこかで聞いたような
話だなあ。総理大臣としては
どう対応していくかが問われるな。
そうね。緊急事態宣言を発令するも
感染力がそれほどでもなくなり批判されたり。
息子の翔も感染してしまうの。
息子は相変わらずのトラブルメーカーぶりだな。
総理大臣って敵が多いからなあ。
こういう状況になるといろんな方面から
責められそう。どうなっちゃうんだろう。
『民王 シベリアの陰謀』池井戸 潤 (著) 角川文庫
あらすじ
第二次内閣発足の最大の目玉、元プロレスラーで「マドンナ」の愛称を持つ高西麗子環境大臣が新種のウイルスに感染した。
その感染源はシベリアであるという情報が。
加速する感染と政府の陰謀説に日本は大混乱。
国家を揺るがす未曾有の危機に、総理大臣・武藤泰山はバカ息子の翔、秘書の貝原とともに立ち向かう。
反発する議員と国民相手に感染拡大を阻止できるのか
パーティー会場での挨拶中に暴れ出し、病院に運び込まれたマドンナこと高西麗子が新種のウイルスに感染した、と泰山のもとに情報が入ります。
凶暴になったり、一定期間の記憶がなくなるといった症状が見られるとこのこと。
マドンナと接触した泰山を含む関係者は直ちに検査を行いますが陰性。
マドンナの行動をたどると、どうやら感染源はシベリアにあるようで…。
一方、何とか就職した会社でぼちぼちと働いている泰山の息子・翔は会社の使いで開発商品を並木教授に届けに行きます。
研究室に声をかけドアを開けると、凶暴な目つきをした並木教授が襲いかかってきたのです。
並木教授もマドンナと同じウイルスに感染しており、濃厚接触者となってしまった翔も陽性に。
同じ現場にいた助手の眉村紗英は陰性。
大きな症状もない翔は隔離される毎日に退屈していたのですが…。
一方緊急事態宣言を出した泰山は、国民はおろか、老議員たちからも猛反発を受けます。
都知事の小中は愚策であると泰山をこき下ろし、ウイルス拡散は政府の陰謀であるという説が広がり、国民がデモを行う騒ぎに発展。
内閣不信任の話までもが飛び出す中、泰山が選んだ道とは。
まとめ
未知のウイルスが発見され、感染拡大、緊急事態宣言…と数年前の状況を連想させる今回の物語。
翔は相変わらずアホっぽくはありますが相手の立場になって考え行動できるようになっているところに成長を感じます。
随所に笑いを仕込んでいて、深刻な状況なのにポンポンと行き交う軽妙な会話がテンポ良く読ませてくれます。
印象的なのは、未知のウイルスが日本という国を危機にさらしているというのに、その意識を持たず、あえて政治のための政治として対応を要求してくる「老害」の議員たち。
それなりに「政治」をしている泰山もあきれるほどの身勝手ぶりはかえって彼の政治家としてのプライドに火をつけたようです。
今の日本に泰山のような、国民の怒りを受け止める政治家はいるのか?(いやいないかな)と考えてしまう、政治エンタメ小説の第二弾です。
<こんな人におすすめ>
謎のウイルスにパニックする国民と国を守ろうとする総理の物語に興味がある
前作『民王』を読んだ
池井戸 潤のファン
多くの駆け引きや誹謗中傷に
振り回されることなく
今なすべきこと、これからを
考え実行できる泰山のような政治家は
どれくらいいるんだろうな。
国家全体、国民のことを考えれば
自ずと進むべき道は決まるのかも。
こうした物語の中で活躍しているような
政治家が増えることを願いたいわね。
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