『よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続』
宮部 みゆき (著) 角川文庫
こちらは『三島屋変調百物語』
第八弾よ。富次郎はある老夫婦から
かつて村人たちを襲った「ひとでなし」
という化け物の話をするの。
「ひとでなし」?
妖怪とか鬼みたいなものか?
屍人が再び蘇り、生きている
人間を襲うの。襲われて死んだ
人間は同じように蘇り…
え それってゾンビじゃん!!
この時代の武器といったら
刀や弓だろ?そんなんで
太刀打ちできるのか…?
あらすじ
江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は人を招き、いっぷう変わった百物語をしている。
語り手一人に聞き手一人、語られる話は一つだけ。
その話が外にい漏れることはない。
聞き手である富次郎は、従妹おちかがお産を控えていることもあり、しばらく百物語を休むことに。
そんな富次郎のもとへとやってきたのは互いの手首を紐で縛って繋いでいる、豊かそうな身なりをした老夫婦。
その口から語られたのは、かつて村人たちを襲った「ひとでなし」という化け物の話だった。
村に突然現れた生きている死人「ひとでなし」
出産をひかえたおちかに障りがあってはいけないと、しばらく百物語を休むことにした富次郎。
休みに入る前の、最後の語り手としてやってきたのは、裕福な身なりをした、しかしどこか変わった様子の夫婦。
浅川宗右衛門と名乗る夫が語り出したのは、三十二年前、彼が十七歳の若者だった頃に村で起こった出来事。
夜見ノ池という名の池から土左衛門が浮かび上がったのですが、引き上げたその死体が何と立ち上がりこちらに向かって歩いてきたのです。
まだ真吾と名乗っていた宗右衛門も土左衛門をつかまえようとしますが強い抵抗に遭います。
家中の武士である八郎兵衛が矢を放ち、土左衛門の首に名中。
それでも動きを止めない死体の首を刀で刎ね、ようやく倒すことができたのでした。
再び夜見ノ池から何者かがやってきたのですが、それは花江という十五の娘。
池の向こうからやってきた花江は父を捕らえることができず、この村の人々に迷惑をかけた、と詫びました。
花江の村では二、三十年に一度あらわれる生きている死人「ひとでなし」が多数発生。
噛まれた者もまた「ひとでなし」となるため、ただ数が増えていくばかり。
話を聞いた先代宗右衛門は真吾を含む武芸の達人数名を率いて「ひとでなし」の退治へと向かいます。
まとめ
江戸時代の、ある村で起こる人間対ゾンビのまさに死闘を描きます。
池を通してつながった花江の村は貧しく、しかも「ひとでなし」が増え続け彼女の父親までもが人ではない状態に。
真吾たちが刻一刻と変化していく「ひとでなし」の特性や動きを考え、予測し戦って行く姿は手に汗握ります。
死の淵に立ち、ともに苦難を乗り越えた夫婦の覚悟と絆がひしひしと胸に迫る、恐ろしくも感動するシリーズ第八弾です。
<こんな人におすすめ>
江戸時代の人間VSゾンビの死闘を描いた物語に興味がある
『三島屋変調百物語八之続』シリーズのファン
宮部 みゆきのファン
おお… 読んでいる間
知らないうちに歯を食いしばって
いたぜ…。江戸時代、実際に
こんなことがあったんじゃないかって
思ってしまうな。
未知のものに挑む決死の覚悟は
大切な者たちを守るため。
そんな思いは江戸も現代も
変わらないものなのかも
しれないわね。
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