こちらは目の見えない少女・とわが
母と暮らした少女時代から
壮絶な時を経て現在を生きるまでを
描いた物語よ。
壮絶!?いったい何が
起こったっていうんだ?
母が家を出て行ってしまい
たった一人で過ごした期間があったの。
その後施設で過ごし再び育った家に
戻るのだけれど庭の花木がとわの支えに
なるのよ。
目が見えない状況で一人で
暮らしてきたのか…
いったい何を思い、感じながら
日々を生きてきたんだろうな。
『とわの庭』小川 糸 (著) 新潮文庫
あらすじ
盲目の少女とわは、大好きな母と二人で暮らしている。
母は本を読んでくれて、庭の木や草花、飛んでくる鳥などから移りゆく季節を教えてくれた。
しかし、ある日母はいなくなった。
孤独な闇の中で生き延びた少女は、そこから自分自身の人生を歩き出す。
母の愛と庭からの恵みを糧にたった一人で生きる少女
幼い頃から目が見えないとわ。
しかし愛情をたっぷりと注いでくれる母との暮らしは、とわにとって満ち足りたものでした。
庭には季節の巡りがわかるようにと沈丁花や金木犀など香りのする木をたくさん植え、「とわの庭」と名づけました。
また、母はとわにたくさんの本を読み聞かせて、世界を広げてくれたのです。
生活に必要なものは週に一度、オットさんが届けてくれます。
彼が来ることでとわは曜日を知るのでした。
しかし、母が生活のためにと働きはじめてから暮らしは少しずつ変わっていきます。
家を空けることが増え、ついに家に帰ってこなかった母。
それからとわは、オットさんの届けてくれるもので命をつなぎ、庭の香りで季節を感じますが、そのうちオットさんの来訪も途絶えます。
ゴミの山の中で何年も過ごしたのち、ある日の朝クロウタドリたちの声に誘われ、意を決して外に出ます。
地面の上をはじめて歩いたとわは数歩で転んで動けなくなりましたが、それは間違いなく、新しい世界へと踏み出す第一歩だったのです。
病院へ運ばれ、体調が回復した後は施設へ移り、生活や一般常識など、様々なことを学びます。
そして母が逮捕されたニュースと、本人の供述を耳にします。
しかしとわは、自分ではない、どこか遠くの知らない人のことのように感じるのでした。
やがて施設を出たとわは、かつて住んでいた家に戻り、一人暮らしを始めます。
今度は一人で料理をして味わい、片付け、部屋のそうじをし、お風呂も入ります。
恋人との日々やたまにお邪魔するようになったご近所さん、香りあふれる庭と盲導犬ジョイとの出会い。
永遠の世界は豊かな愛と光に満ちているのでした。
まとめ
虐待とも言えるような凄まじい環境で育ったとわ。
しかし彼女の心は母からもらった愛と、母が作ってくれた庭から発せられる恵みで心が満たされていました。
彼女が自分を卑下したり、自暴自棄になったりしないのは、その愛に包まれていたから。
そんな彼女はいつの間にか誰かを元気にさせたり、あたたかい気持ちにさせているのです。
彼女の強さは愛を受け取り、信じ続けること。
そんな風に感じる、愛と感動に満ちあふれる物語です。
<こんな人におすすめ>
盲目の少女がたった一人で生きていく姿を描いた物語に興味がある
盲目の世界で生きてきた女性が周囲の愛やいのちの喜びに満ちた庭の香りから生きる力を得る話を読んでみたい
小川 糸のファン
彼女の生きてきた状況は
辛いことが多かったはずなのに
愛と幸せで満ちてるのが
すごい…( இωஇ )
自然の生命力、命の喜びを
感じ続けることは
自分自身の喜びにつながる。
とわ自身の命が輝いているのは
それを理解しているからなのかも
しれないわね。
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