こちらはルソーの名画に
酷似した絵の真贋を
ある手記をヒントに二人の人物が
探っていく物語よ。
ほお〜。その二人はルソーの
研究家みたいな人物なのか?
そうね。一人はMomaのキュレーターである
ティム・ブラウン。もう一人はルソー研究者の
早川織江。絵の所有者から古書を渡され
一日一章ずつをそれぞれが読み、
読み終わる七日目にそれぞれが見解を示すの。
へえ〜。その本には何が書いてあるんだ?
それにその二人がどんな結論を出すのか
興味深いな。
『楽園のカンヴァス』原田 マハ (著)新潮文庫
あらすじ
1983年、ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日一通の招待状を受け取る。
それは伝説のコレクター、バイラーからで、所有のルソー作品調査のためにスイスの自宅へ来てほしい、という内容だった。
見せられたのはルソーの名画「夢」に酷似した絵でその真贋判定をした者に絵を譲ると言う。
日本人研究者・早川織江と対決する形で謎の古書を一部分ずつ読みながら推測した二人の結論と、ルソーとピカソの二人の画家がこの絵に込めた思いとは。
ルソーの名作に酷似した一枚の真贋は
上司のチーフ・キュレーター、トム・ブラウンと一字違いのティムは、自分の名前当てに届いたものの、それは間違いで本当は上司宛に来た招待状ではないかと考えます。
しかしルソーを研究してきたティムはこの機会をどうしても逃したくなかったため、バイラーの招待を受けることに。
ティムのほかにもう一人の女性が招かれていました。
この女性、早川織江はパリの大学院でルソーを研究しているといいます。
彼女が画期的な着眼点で他の研究者の注目を浴びている人物であることにティムは気付きます。
そして車椅子に乗った老人、バイラーが二人に見せた絵は、Momaにある『夢』に酷似したもの。
しかし筆のタッチや緑の明暗が微妙に異なり、裸婦の手の形が違っていました。
タイトルは『夢をみた』。
作品の真贋を確かめるために、バイラーはある条件を提示します。
一冊の古書を手に取り、七章から成るこの物語を一日一章読むこと。
その上で七日目に真作か贋作かを判断すること、というものでした。
それはアンリ・ルソーにまつわる「物語」だったのです。
まとめ
Momaのキュレーター・ティムと、気鋭の研究者・織江が一枚の絵の真贋をめぐって火花を散らします。
名画に酷似した絵を前に一歩も引かず、自分の意見を主張する織江ですが、ティムと意見を交わしルソーの「物語」を読み進めるにつれ、次第に様子が変わってきます。
ルソーが女神に出会い、応援してくれる人たちを得てどのように描き、それを周囲の人々がどう見ていたのか。
知らぬうちにその世界に引き込まれ、彼らと同じ空気を吸っているような感覚になります。
ルソーを愛する二人が私たちをここに導き、つないでくれた。
そんな風に感じる読後に深い余韻が残る物語です。
<こんな人におすすめ>
巨匠の名画の真贋をめぐり二人の美術研究家が火花を散らす物語に興味がある
ルソーとピカソが生きた時代のつながり、作品が生まれた背景を描いた物語を読んでみたい
原田 マハのファン
すごいなあ。ルソーとピカソが
現代に生き返ったように
感じるぞ。ピカソっていい奴。
作品の描かれた背景を知ることで
ぐっと身近に感じるわよね。
それを伝える二人の人物の
作品への愛を強く感じる物語ね。
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