こちらは『山女日記』に続く第二弾よ。
様々な思いを胸に山を登る女性たちの
姿を描いているの。
おお。今回はどんな女性たちが
登場するんだ?
喫茶店を開こうと頑張っていた
夫を亡くしてしまった女性や
今後の働き方に迷っている
女性社員などね。
なるほどね。そりゃあ
辛かったりもやもやしたり
することもありそうだな。
彼女たちは山に登ることで
何を感じるんだろう。
『残照の頂 続・山女日記』湊 かなえ (著)幻冬舎文庫
あらすじ
亡くなった夫への後悔を抱えている喫茶店の女店主、これからの働き方に迷っている女性会社員。
三人組の一人を思いながら山へ挑む初心者の二人の女子大生。
様々な思いを胸に山へ登る女たちは山頂からの景色に何を見て、感じるのか。
後悔と迷いを抱いて山を登る女たち
定年後に喫茶店をやりたい、と言っていた夫がオープンを待たずに突然亡くなり、綾子は夫の意志を継ごうと何とか一人で喫茶店『GORYU』を開店し、一人で営業を続けてきました。
店に出入りしている乳製品会社の社員、麻実子が学生時代に山岳部だったことを知り、彼女に案内してもらい夫が一番好きだった山、五竜岳に登ることに。
現地では四十二歳の麻実子と同世代くらいの男性、山根がガイドについてくれます。
麻実子と山根の間には微妙な雰囲気が漂いますが…。
山根は写真家でもあり、夫が生以前に購入した写真が山根の撮った五竜岳でした。
どこの山か知らずに店に飾っていた綾子でしたが、麻実子が五竜岳であることを教えてくれたのです。
和やかに山を登りながらも綾子は、夫の夢にもっと寄り添っていれば良かった、と後悔の思いを抱えていました。
一方麻実子は翌日綾子と別行動となり、山根と歩きながら大学時代に山岳部で彼とパーティーを組んだことを思い出します。
あの頃の夢、山への思い。
そしてGORYUで写真を見つけ、一筋の光の橋を渡してくれたように感じたこと。
綾子が頼んだというガイドが山根だったことに驚いた麻実子ですが初対面のようにふるまいます。
しかし綾子がいない今、ぽつぽつと二人は会話を交わします。
離婚した母のためにもと、一流企業に就職した麻実子。
しかし、一人でも大丈夫と笑顔の母を見ると、あれ?自分はこの選択肢で良かったのか?と迷いが生じます。
そんな麻実子に山根は「急がなくていい。山は変わらない」と…。
まとめ
登った先には見通しのいい世界。
それはゴールではなく帰路のスタートでもあります。
天気が代わり、景色の色が変わっても山は変わることなくその場所で、ただそこに在るのです。
その安らぎを求め、次へ進むための力をチャージするために人は山を登るのかも。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
山と自分の人生をなぞるような、これからの一歩を照らしてくれるような物語を読んでみたい
前作『山女日記』を読んだ
湊 かなえのファン
雨が降っても雪が降っても
そこに確かに在り続けるだけで
勇気をもらえるもんなんだな。
変わらずに存在し続ける山に
登ることで、自分の中の
変わらない部分に気が付けるのかも
しれないわね。
前作『山女日記』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます。
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