こちらは生まれ育った地で
夫と息子と暮らしている
希和が民間学童で働き出した
ことで少しずつ変わっていく
物語よ。
へえ。民間学童かあ。
誰かが個人的にやってるって
ことか?
希和の同級生の弟が始めた
学童なの。いろんな子供が出入り
していて希和の息子も行っている
ようよ。そこで息子が書いた
「こんなところにいたくない」という
文字を見つけて驚くの。
なんだって??
そりゃ心配だな。学校で
嫌なことがあったのか
それとも家の中で何か
不満があるんだろうか。
『声の在りか』寺地 はるな (著)角川文庫
あらすじ
生まれ育った地元で、夫と小学四年生の息子、晴基と暮らしている希和。
ふとしたきっかけで希和は晴基が出入りしていた民間学童で働きはじめることに。
晴基が短冊に残した「こんなところにいたくない」という言葉、居心地の悪い保護者のLINEグループ、そして夫との関係。
日々の暮らしの中で少しずつ失ってしまった声を、希和は少しずつ取り戻していく。
声にならない思いが積もっていく毎日
かつての同級生の実家であり病院を経営している建物の中に民間の学童ができました。
希和も通っていた小児科で、同級生だった理枝ちゃんの弟である要が経営しているとのこと。
加入していない子供も出入りしているようで晴基もその一人。
迎えに行った希和は短冊に息子の字で書かれた「こんなところにいたくない」という文字にドキリとします。
何か学校で嫌なことがあったのか…。
希和自身は専業主婦で、息子の面倒を見、家事をしてスマホを見ながら食べるのに外食をしたがらない夫のために食事を作る日々。
晴基の同級生のグループLINEには担任教師への文句などがあふれ、同意できない自分もいます。
ハッキリとは言えないけれど「何か違う」と感じ続けていた希和は、晴基のすすめもあり要の運営する学童で働きはじめることに。
最初は子供との距離感がつかめず戸惑う希和でしたが、子供に対して大らかな態度で構える要とまっすぐな子供たちの姿を見て、自分自身の中に少しずつ何かが生まれてくるのを感じます。
まとめ
気の進まないママ友のグループLINEに、家事を全く手伝わない夫。
大人しそうな見た目の自分にマウントを取ってくるあらゆる人間たち。
いつの間にか「母親だから」と世間の価値観に合わせるように行動し、自分の中の違和感に目をつぶってきた希和。
しかし、学童で働き始め、要の子供への思いや子供たちが時に傷つきながらも親を求め、愛してくれるその姿を目にして抑えてきた自分が少しずつ目を覚ましていくのを感じます。
わからないものはわからない、不快なものを不快だとハッキリと伝えられるようになった希和は、「自分の声」を取り戻せたのかもしれません。
生きづらさを感じる人の背中をそっと押してくれる物語です。
<こんな人におすすめ>
PTAや家族のことで口に出せない思いを抱える女性を描いた話に興味がある
価値観に囚われ自分自身の声を発する事のできなかった母親が自分を取り戻していく話を読んでみたい
寺地 はるなのファン
知らない間に自分の声を
失っていることって
あるかもしれないなあ。
自分の声を取り戻すことは
自分がどんな考えを持ち
言葉を口にする人間なのかを
思い出すことなのかも。
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