こちらは独身老女が将来を考えて
不安になり、刑務所に入るべく
様々な犯罪を模索するお話よ。
刑務所だって!?
なんでそんなことを考えたわけ?
高齢の受刑者が介護されて
いるところをテレビで見たの。
食事も出るし、老後の心配が
ないのでは、と考えたのね。
なるほどねえ。
しかし、そんな犯罪なんて
簡単にできるもんなのかね。
『一橋桐子(76)の犯罪日記』原田ひ香 (著) 徳間文庫
あらすじ
パートをしながら一人で両親の介護をしてきた76歳の桐子。
両親を看取った後、高校からの友人・トモとつましくも楽しい同居生活をはじめるが、たった三年で彼女は亡くなってしまう。
収入は年金とパートの清掃のみ。
孤独死にでもなれば周囲に迷惑がかかる。
そんなある日、高齢受刑者が刑務所で介護されている姿をテレビで目にした桐子。
これだ!と感じた桐子は刑務所に入ることのできる犯罪を模索する。
刑務所に行けば老後も安心?
同居人であり、親友でもあったトモが亡くなり、家賃の支払いが厳しくなった桐子は、不動産屋へ相談しますが、保証人もおらず老女である彼女が住めるような物件はなかなか見つかりません。
おまけに知人を装って家へやってきたコソ泥に香典を盗まれてしまいます。
交番に行き警官と話をしたり、テレビで高齢者の受刑者の様子を見るうちに、刑務所に入ればお金も食も病気も心配しなくて良いのではないか、と考えます。
桐子の犯罪をすんでのところで止めてくれた女子高生、雪菜と交流するようになり、複雑な家庭環境にある彼女は桐子の状況に理解を示し、協力することになったのですが…。
まとめ
ギリギリの生活を送りながらも、生来の真面目な気質と地に足のついた価値観で穏やかに暮らしてきた桐子。
しかし、友人の死をきっかけに老いることでの生きにくさに直面し、不安になります。
そこで選んだ刑務所への道ですが「犯罪を犯すのって、結構むずかしいね」と善人丸出しの発言に笑みがこぼれます。
桐子のようなまっとうな老人が安心して暮らしていける世の中にしていかなければ。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
76歳の老人が先行きの不安から犯罪に手を染めようとする話に興味がある
76歳の身寄りのない老人のリアルな生活を描いた話を読んでみたい
原田ひ香のファン
孤独と不安って切実な問題だ。
こんなまともで実直な老人が
犯罪にまで走ろうとするなんて…
また悪人になりきれないところが
切なくもあり、おもしろいところでも
あるわね。老人が生きていくのに不安の
ない社会について考えさせられる物語いね。
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