こちらは昭和40年代頃、
北海道の釧路にあるキャバレーでの
お話よ。この店で働く若者が
マジシャン、歌手、ダンサーたちと
同居することになるの。
キャバレーかあ。
マジシャンたちは巡業?してる
カンジなのか。それがなんで
従業員と同居することに?
キャバレーには社員寮と称する
アパートがあるのだけれど
古くて汚いのよ。
ゲストが来た時はそのことを伝えると
近くに宿を取る人がほとんど。
けれど今回のメンバーはボロくてもいいから
お金のかからない方を選んだっってわけ。
あちこちの店をまわっている
芸人たちだからクセありそうだなあ。
仕事も生活も一緒なんて
若者も大変なんじゃないのか?
『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』
桜木 紫乃 (著)角川文庫
あらすじ
北海道の釧路にあるキャバレー「パラダイス」で雑用係をしている二十歳の章介。
ある日、章介の暮らすオンボロアパートに父が小さな箱に入ってやってきた。
母が置いていった父の骨壷と共に過ごしていた章介だが、ひょんなことからマジシャン、歌手、ダンサーというメンバーたちと1か月の間、同居することに。
苦労の多い人生を送ってきたであろう彼らとの賑やかな日々は、章介に寂しいという感情や家族の温もりを教えてくれる。
強烈な個性を持つ3人との1か月の同居生活
母が稼いだ生活費から章介のお年玉まで片っ端からギャンブルに当てては溶かしてしまっていた父。
そんな父が亡くなり、葬式は出るかとの母からの問いに「行かない」と答えた章介。
すると父の骨壷と母からの手紙がドアの前に。
「父ちゃんを頼みます」との文面に、ようやく母も父親から解放されたのだな、と思いつつ、骨壷をどうしたら良いかがかわらず、とりあえず部屋の隅に。
章介が働くキャバレー「パラダイス」には1か月契約で三人のタレントがやって来ました。
失敗ばかりするマジシャン、女の化粧とドレス、そして女言葉で話す男性歌手、年齢不詳のストリッパー。
楽屋の準備にステージ調整に照明の仕事も加わり、忙しいながらも充実した気持ちになる章介。
個性豊かで場慣れしている3人ですが懐は寂しいらしく、章介が暮らす寮で1か月を過ごすことに。
章介の部屋にある骨壷を見てギョッとする3人。
章介の父親だと知った歌手のソコ・シャネルはお経を読み、さらに休みの日に全員に声をかけ寺へと出かけます。
「納骨する」とシャネルは言うのですが…。
妻を亡くして以来、失敗続きのマジシャン、キレの良いトークと張りのある歌声で笑いと涙を誘う歌手、ストリッパーという仕事に覚悟と誇りを持つ踊り子。
彼らと暮らし、自分の話を聞いてもらい、彼らの話を聞き、その仕事ぶりを目にして章介は自分の中の涸れていた部分が少しずつ潤っていくのを感じます。
まとめ
マジシャン、歌手、ストリッパーという職業もオリジナリティを求められるものですが、彼らのキャラクターもまた強烈です。
しかし、北海道の冷たい空気の中で良い塩梅に調和しています。
家族のあたたかさや、愛することがよくわからなかった章介。
しかし彼らの、苦労を重ねてきた優しさや生きていく上でのたくましさを目にし、感じることで少しずつ変わっていきます。
寂しさと思いやりを抱いてつながる1か月限定の家族は、あたたかな思いと明日へと一歩踏み出す力を与えてくれる。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
北海道のキャバレーを舞台に、下働きの若者と芸人三人が同居する物語を読んでみたい
他人との同居生活から家族のあたたかさ、一人の寂しさに気づいていく若者を描いた話に興味がある
桜木 紫乃のファン
あああ 泣けるなあああ
寒い北海道だけど
あったかいいなあ〜(´இωஇ`)ぅʓぅʓ
寂しさや思いやりを抱いて
関わりあうやりとりは
心の中の欠けている部分を
満たしてくれるのかもしれないわね。
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