こちらは悩みを抱えた人の前に
現れる猫シェフの物語よ。
猫がシェフなの!?
いったいどんな料理を
作ってくれるんだ?
ホッキ貝のチャウダー、土鍋で
炊いた鯛めしなど旬の魚介類を
使ったメニューを提供するのよ。
え、めちゃおいしそうなんだけど!
で、その美味しい料理は
どんな風に悩みに効いてくるんだろう?
『ネコシェフと海辺のお店』標野 凪 (著)角川文庫
あらすじ
仕事、恋愛、子育てなど悩みを抱えた人の前にふいにあらわれるのは、海辺にぽつんと建つ小屋。
ここでは料理上手な猫シェフが、悩む彼らにとっておきの料理を振る舞う。
豊かな海の幸を使った料理とシェフの言葉に客たちはいつしいか心がほぐれ、自分だけの道を見出していく。
悩む主婦の目の前に現れたサバトラのシェフ
西脇千晶は四十歳の専業主婦。
夫の竜馬と高校生の娘、梨央との三人家族。
久しぶりに大学時代の友人、雛菊と食事をし、ずっと仕事を続けている彼女はすごい、と改めて感じます。
自分は結婚を機に仕事を辞め、その後は家と家族の面倒を見てこの年になってしまった…。
若い女が近くにいる気配を見せる夫、自分の世界を築きはじめた娘、そして衰えていくだけの自分。
世間や夫、そして夫の若い恋人を見返そうと、求人サイトから面接を申し込んだ千晶。
気合いを入れて面接に挑んだもののあえなく玉砕。
やりきれない思いで「どうしたらいいのかわからない」とつぶやきます。
するとどこからか「たら?鱈ならあるよ」と声がします。
顔をあげると今までいた商店街ではなく、波が打ち寄せる砂浜。
そこへ二本足で立つサバトラが「鱈食べるだろ」と言い、海辺の建物に千晶を案内し、手際よく鱈を捌きブランダードという料理を作ってくれました。
鱈とじゃがいもに牛乳を加え、柔らかくなったものをペースト状に。
パンに載せて食べると口のなかでたちまち蕩けます。
いっしょに食べはじめた猫シェフは鱈がおいしい理由について話しはじめます。
その言葉に新たな力が湧いてきた千晶は、自分の役割を改めて感じ、その道を進んでいく決意をするのです。
まとめ
登場人物たちがゆるやかにつながる連作短編集。
夫の不倫に悩む妻、不倫を繰り返す自分に嫌気がさすコーヒーショップの女店長、友人や母親にイヤだと言えない女子高生、結婚した娘と義両親の関係が心配でたまらない実母、続けていても報われない仕事に疲弊する女性。
そんな彼女たちの前に現れるサバトラの猫シェフは、食材や料理に絡めて彼女たちの生き方を問いかけてみたり、シンプルに見解を示したりします。
おいしい料理は固くなった心をほぐし、自分が決めた道へと一歩踏み出す力をくれるのです。
おなかも心も満たされる、あたたかな物語。
<こんな人におすすめ>
猫がシェフとなりおいしい料理を作る話に興味がある
おいしい料理から自分が抱える問題へのヒントを得ていく話を読んでみたい
標野 凪のファン
うまそう!!俺も食べたいなあ。
悩みはないけど。
旬の素材は美味しいから
味付けや調理もシンプル。
悩みも案外シンプルに考えると
いいのかもしれないわね。
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