こちらは、借金に首が回らなくなった男性が
ある女性を伴って、これまでにつきあってきた
女性たちに別れを告げていく、というお話よ。
ん?なんか聞いたことが
あるような話だが…?
太宰治の遺作、『グッド・バイ』を
オマージュして描かれた作品の
ようよ。
なるほどね。複数の女性と交際しながら
情けない一面を見せる物語を伊坂流に
アレンジするとどのようになるのか。
気になるな!
『バイバイ、ブラックバード』
伊坂幸太郎 (著)双葉文庫
あらすじ
事情により「あのバス」に乗ってどこかへ連れていかれることになってしまった星野。
その前に、どうか恋人たちに別れを言わせて欲しい、という要求が通り、五人の恋人たちのもとを訪ねることに。
監視役であり、体がとてつもなく大きく、信じられないような暴言を吐く女、繭美とともに、恋人たちとの思い出をかみしめながら別れの話を切り出した星野だったが…。
傍若無人な大女を連れ立って恋人たちに別れを告げる
イチゴ狩りの食べ放題で出会った廣瀬あかり、星野をひきそうになったシングルマザーの霜月りさ子、怪盗好きのロープマニア・如月ユミ、耳鼻科で知り合った神田那美子、撮影を見にきた星野と会話を交わした女優の有須睦子。
5人の女性は誰もが愛すべき部分を持つ魅力的な人物ですが、彼女たちと同時に付き合っていた星野は、特に何か秀でたものもなく、何の取り柄もない、と言っても良い男です。
借金を返すことができず、バスでどこかへつれていかれることになるのですが、その前に恋人たちに別れを告げようと考えます。
監視者であり同行者である繭美は、「常識」「愛想」「悩み」などの言葉を塗りつぶした辞書を持ち歩き、星野と女たちに対して傍若無人なふるまいをします。
恋人たちの困りごとを救いたい、という星野の訴えを鼻で笑う繭美でしたが…。
まとめ
太宰治の「グッドバイ」を伊坂流に紡ぐ物語。
とにかく繭美のキャラクターが強烈で、かよわき女性たちとの対比によりその異質さがいっそうひきたちます。
情けない男が注ぐ女たちへの愛情とその縁、異彩を放つ繭美との関係は、まるで大人のおとぎ話のよう。
ラストシーンが映画のように深い余韻を残す物語。
<こんな人におすすめ>
なんの取り柄もない男が恋人たちに別れを告げていく物語に興味がある
太宰治の「グッド・バイ」を読んだことがある
伊坂幸太郎のファン
伊坂の手にかかるとたちまち
キャラが色濃く立ち上がり
物語に濃密さが増すところがさすがだな。
太宰の『グッド・バイ』を連想させつつ
完全に伊坂流エンタメ作品に仕上がって
いるところはさすがとしか言いようが
ないわね。伊坂マジックの本流を
見せつけられたかのような作品ね。
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。