
こちらは関わりのないように
見える人々がそれと意識しない
うちに互いに助けられたり
また助けたりする様子を描いた物語よ。

へえ〜。どんな状況の人々が
登場するんだ?

付き合っていた彼女にふられてしまった
新人社会人、いつもいじめられている少年、
そしていつもだれかにぺこぺこと謝っている
ちょっと頼りない課長たちが登場するわ。

どうやって彼らが助け合ったり
するのか見当もつかないな。
伊坂マジックを拝見するとしよう。
『マイクロスパイ・アンサンブル』伊坂幸太郎 (著)幻冬舎文庫
あらすじ
彼女にふられてしまった社会人一年生の男、いつも無抵抗でいじめられている少年、いつみてもぺこぺこして頼りない課長。
交わることのないように思える人々も、どこか見えないところで助けられたり、知らないうちに助けていたり。
そんな不思議なつながりと小さな優しさと偶然が紡ぐ、驚きとわくわくが詰まった現代のおとぎ話。
ちょっとした優しが見知らぬどこかの誰かの救いとなる
「松嶋君って、エンジン積んでないよね」とよく言っていた彼女にふられショックを受けた松嶋。
一人猪苗代湖へ向かい浜を歩いている途中、グライダーのおもちゃを発見し手に取ります。
そのグライダーをそっと投げると思いのほかよく飛び、湖の対岸へと消えていきます。
失恋の傷を抱えつつ、時に社会人として人間としての失敗をしながら社会人2年目を迎えた松嶋は、広告宣伝部が企画したイベント会場の下見として候補地の一つである猪苗代湖へ、門倉課長と二人で向かいます。
社内でも、本人によれば家庭の中でもいつもぺこぺこと謝っている門倉を、少し情けないと思っていた松嶋。
思わず「謝ってばかりで大変じゃないですか?」とたずねると彼は謝って済むならそれに越したことはない、と答え「沽券にかかわる!とか言って怒り出す人間ほど、大した価値を持っていないのかもしれないよ」と。
また同じ空間ながら別世界でいじめられていた少年は、友達や家族から逃げている途中、ある男と出会いグライダーに乗せてもらいます。
やがてこの男、エージェント・ハルトとコンビを組み、様々な工作活動を行うようになった少年はいくつもの作戦を成功させ、油断が生じたのか敵に見つかってしまい銃で打たれた弾が横腹を貫通。
このまま死ぬのか、と意識が遠のく中、どこからか歌が聞こえてくる気がして…。
まとめ
猪苗代湖を中心にオフィスで働く新人や頼りない上司、そして工作活動を行うスパイたちが交錯していきます。
同じ世界にありながら異なる世界で生きる彼らの悩みや苦しみ、そして危険や喜びが少しずつ影響を与えあっている様子に思わず笑みがこぼれます。
大したことなさそうな人が別の誰かにとってすごい人だったり、何気ない優しさが思わぬところで誰かの救いとなったり。
心温まる偶然と力の抜けた格好いい生き様に拍手を送りたくなるような、世界が素敵な場所に感じられる物語です。
<こんな人におすすめ>
交わるはずの世界でそれぞれに生きる人々が何らかの影響を与えあっている話に興味がある
驚きと企みに満ちた現代のおとぎ話を読んでみたい
伊坂幸太郎のファン


読後感がめっちゃいいな!
かっこ悪いと思っていた人物が
かっこ良かったとかめちゃ
痺れるな〜〜。

世の中がなんだか素敵に見えてくる
心が温かくなる現代のおとぎ話ね。
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