『くちなし』 彩瀬 まる (著) 文春文庫
あらすじ
別れの代償に、私は彼の腕をもらった。腕と穏やかな日々を過ごしていた時、彼の妻から思いがけない要求を受ける(「くちなし」)。才能を持つ同級生への思いを描く(「愛のスカート」)。幻想的でありながら、心の動きや感情の揺れを感じる繊細でリアルな愛を描く、七つの短編集。
別れた人の「腕」と幸せに暮らす私
十年付き合ったアツタさんに別れを告げられた私は、彼の左腕をもらいます。腕の面倒を見て、懐いてくるその姿にいやされる日々。そんな時、アツタさんの奥さんがやってきて「夫の腕を返してほしい」と言います。「あなたの腕と交換するのなら」と今度は奥さんの腕を手に入れて…。
相手の体の一部があればいいのか、それとも全部欲しいのか。相手を求める欲求と衝動は一方通行であるがゆえに虚しくもあり、また己を貫くその姿が美しくもあります。
まとめ
愛する人がいる時の、届かない空を掴むような寂しさや孤独、そしてその中にあるほんの小さな幸せ。文章の隅々までそうした空気が行き渡る美しい愛の世界を描いた短編集です。
<こんな人におすすめ>
美しい文章で綴られた幻想的な小説を読んでみたい
奇妙でありながら共感できる恋愛小説に興味がある
彩瀬 まるのファン
本やイラストレビューが気に入っていただけたらポチッとお願いします。
コメント