こちらは人形にまつわる謎や職人たちを描く
『たまさか人形堂ものがたり』の第二弾よ。
若手の職人、冨永がスランプに陥ってしまうの。
スランプかあ〜。いい人形が
作れないとかそういう悩み?
自分の作品にオリジナリティがないと
思い悩んでいるようよ。他の職人からすれば
人形作家ではないのだから売れる人形を
作ればいいだけ、ということのようだけど。
まあ、本人にしかわからない
悩みなんだろうなあ。
店主の澪は冨永にどうやって対応して
いくんだろう。
『たまさか人形堂それから』
津原 泰水 (著) 創元推理文庫
あらすじ
自分の作る人形にはオリジナリティがない。
スランプに陥る若き職人・冨永をなぐさめようとするたまさか人形堂の店主・澪。
しかし「人形を作らない澪さんには、作り手にのしかかる重圧は、永久にわからない」と冨永に言われてしまいます。
少しでも人形を作る側の気持ちを理解しようと、人形教室に通い始めることにしたのだが…。
若き職人 冨永の深い苦悩とは
壊されてしまった創作人形作家の作品、リカちゃんは実在すると主張する特殊人形師、髪が伸びる市松人形など、人形にまつわる謎を鋭い洞察力で推理してきた若き職人、冨永。
しかし、知り合いから送られてきた素人が作った人形を目にすると、自分は人形の人形を作っている、とスランプに。
そして連絡が取れなくなってしまいます。
店主の澪はもう一人のベテラン職人・師村や、毒舌ですが人形づくりには熱い情熱と確かな技術を持つ特殊人形師・束前らの意見を聞きながら、何とか冨永の力になれないだろうかと考えます。
澪は、職人の心がわかってない自分でもせめてその仕事の一端に触れておくべきだと思い、初心者向きかと思われた木目込み人形作りの教室に通うのですが。
まとめ
人形を作る、修復する、販売する、購入する。
リカちゃん人形から大型の創作人形まで、その人形を手にしたり目にした瞬間から人形との新しい人生が始まります。
そこには作る経緯や手にした経緯など、人形と人の数だけドラマが生まれるのです。
澪と束前の軽快なやりとりがテンポよく、穏やかな師村の佇まいに癒され、冨永の苦悩の広さと深さにハッとさせられます。
職人、店主、持ち主、それぞれが抱く人形への思いが深く伝わってくるミステリ連作集です。
<こんな人におすすめ>
人形を修復する職人の苦悩や葛藤を描いた話に興味がある
人形を作る側、手に入れる側に生まれる謎を解くミステリを読んでみたい
津原 泰水のファン
人形師に店主にお客。
人形への思いや関わり方も
それぞれなんだよなあ。
そこが面倒だったり、面白かったり
するわけだな。
何気なく手にしたり、目にしたりする
人形に、いろんな思いが込められて
いることに気づかされるわね。
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