こちらは江戸の吉原を築き、
発展させていった大見世の妻、
そして遊女たちの様子を描いた物語よ。
吉原かあ。華やかな世界とか
女が苦労する様子とかを描いた
ものが多いよな。
そうね。この物語では、吉原が
町としてお上に認められるまでの
経緯や、存続の危機を乗り越えて
いく様子も描かれていいるの。
なるほど。町としての吉原、
経営者がわからの視点だな。
それは新鮮かも。
『落花狼藉』朝井 まかて (著)双葉文庫
あらすじ
数百年にわたり続いていた戦乱の世も、徳川の時代を迎え少しずつ泰平を取り戻していた。
そんな中、日本橋のはずれにある傾城町に吉原が誕生した。
吉原の大見世である西田屋の女将・花仍は気が短くて喧嘩っ早い気性の持ち主だが、町のために身をつくす夫の甚右衛門には頭が上がらない。
未熟ながらも夫の力になりたいと思いながら見世を切り盛りしていく。
幕府からの難題、遊女の色恋沙汰、ライバルである歌舞伎の踊り子や湯女たちなどに頭を悩ませつつ、西田屋のため、吉原の町のために奔走する。
吉原で起こる問題と発展して行く様子を描く
各地に点在していた傾城屋を一箇所にまとめ、町をつくりたい。
そう考えた甚右衛門が京から江戸へ下ってきたのは二十年前のこと。
戦乱の時代を終え、一気に人が江戸へ流れ込み甚右衛門の目論見は当たり、繁盛します。
御奉行から「売色御免」の許しをもらい、江戸唯一の売町となりました。
しかし京からくだってきた歌舞伎者や湯屋の女たちはこの決まりをかいくぐり、吉原よりも安い価格で身体を売っています。
また花仍が大事に育ててきた太夫が妊娠。
本人の意志を尊重し、産ませたいと考える花仍ですが…。
さらにお上からは夜の営業禁止のお達しが。
次々と起こる問題に、花仍は吉原の面々と力と知恵を出し合って乗り越えていきます。
まとめ
吉原の町ができた頃の江戸の様子、仲見世で遊ぶ側、働く側のルールなど、日本一の遊郭が歩んできた道のりを、経営する立場の目線で描きます。
花仍の単純で猪突猛進な部分と遣手のトラ婆とのやりとりが笑いを誘い、良いアクセントに。
吉原を守る、そこで生きていく人々が紡ぎ出す感動の物語。
<こんな人におすすめ>
吉原という町がどのように誕生し、発展していったかを描いた話に興味がある
経営側の視点で吉原の町とそこで生きる人々を描いた物語を読んでみたい
朝井 まかてのファン
なるほどねえ。売町として違法者たちとの
対立とか興味深いものがあるな。
ちょっと駆け足感があるのと主人公の描写を
もう少し掘り下げてもらったほうが
説得力が増したかなあ。
見世のおかみとしては稚拙な部分が
気になる花仍だけど、だからこそ
遣手のトラ婆とのかけあいがより
おもしろくなるのかも。吉原という町の
ルールと発展、そして当時の風俗の様子が
よくわかる物語ね。
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