こちらは幸せな結末を
迎えることができなかった
11の物語を収めた短編集よ。
ほほう。悲劇的な話?
たとえばどんな話が
あるんだ?
姉ばかり可愛がられていて
妹の自分は両親から嫌われていると
感じている女子高生が起こした行動や、
幼稚園受験に力を注ぐ母親の話などね。
日常的になくもない話だが…
それがなぜアンハッピーエンドを
迎えることになるんだろう?
『ハッピーエンドにさよならを』
歌野 晶午 (著) 角川文庫
あらすじ
両親は姉を可愛がり、妹である私のことを嫌っている。
姪の理奈からそう聞かされ、いかに自分が不公平な目に遭っているかを聞いてあげていた美保子。
理奈は何やら決意した様子で…(「おねえちゃん」)。
近所に越してきた常盤さんの奥さまは、小まめに働く礼儀正しい方。
一方、旦那さんは無愛想で神経質な様子。
近所の騒音に怒鳴りこんできたが、どうやらそれは息子が受験を控えているからだとか。
しかし、息子など見かけたこともなく…(「サクラチル」)。
娘を名門幼稚園へ入れるため過密なスケジュールを組み、お金をかけて習い事をさせてきた真智子。
いよいよ試験本番の日を迎えたのだが(「防疫」)。
日常のちょっとしたズレから戻れない場所へと転がり続け、幸せな結末を迎えることのできなかった、11の物語。
ちょっとした不満や不安が予想外な展開を生む
自分だけが何をしても叱られ、頑張ってもほめられる事がない。
それでも何とか頑張ってきたけれど、両親の話を漏れ聞いてしまった理奈。
ところどころ聞き取れた単語をつなぎ合わせたところ、自分は姉の病気のために作られた子どもで、姉が元気になった今は用なしになったのではないか、と推測する理奈。
それは違う、と強く言えない美保子に対し相談したいことがある、と理奈が和室のドアを開けると…(「おねえちゃん」)。
庭を手入れして立派な菜園を作りあげ、いくつもの仕事をかけもちして働いていた常盤さんの奥さま、芙美子さん。
旦那さんは働いている様子もなくぶらぶらしています。
夜には旦那さんが怒鳴る声も…。
何でも受験生の息子さんがいらしたようですが、見かけたことはありません。
あんなことがあって今頃どんな思いでいるのか…(「サクラチル」)。
まとめ
明かすことのできない秘密が生む家族の悲劇、愛ゆえに暴走が止まらなくなってしまった挙句の結末、ほんのいたずら心が生んだ目を背けたくなる真実。
逃れられない恐怖、そして悲しみと切なさが見事な叙述トリックの中に潜んでいます。
その結末に驚き、胸が痛くなるような余韻を残す11編を収めたミステリ短編集です。
<こんな人におすすめ>
ハッピーエンドを迎える事ができなかったミステリに興味がある
恐怖や悲しみが根底に潜む叙述ミステリを読んでみたい
歌野 晶午のファン
ほんの少しのすれ違いが
こんな悲劇を生み出すなんて…ヽ(; ゚д゚)ノ
その道を選ぶしかない状態に
陥ってしまった者たちの
悲哀や苦しみも感じられる
ミステリー短編集ね。
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