芸への飽くなき炎が己自身をも焼き尽くす

のこ
のこ

こちらは歌舞伎役者の人生を

描いた物語の下巻よ。

俊介も戻ってくるのよ。

ぬこ
ぬこ

おお!生きていたのか。

良かったじゃないか!

また歌舞伎役者をやるんだろ?

のこ
のこ

そうね。その復活劇には

綿密な計画が練られたの。

一方喜久雄は歌舞伎役者を

廃業になるか、というところまで

追い詰められてしまうのよ。

ぬこ
ぬこ

なんだって!?

そりゃ大変だ。

喜久雄にいったい何が起こったんだ?

『国宝 下 花道篇』 吉田 修一 (著)朝日文庫

あらすじ

行方知れずであった半次郎の息子、俊介が妻子を連れて戻ってきた。

出奔中に芸を磨いていた俊介の再出発は念入りに計画される。

一方、半次郎の名を襲名した喜久雄は、師匠が亡くなり、芝居の世界でも良い役につくことができない状態に。

しかしどうしても芝居の世界で生きたい喜久雄が取った手段により、さらに舞台へ立つことが困難となり…。

舞台の上で生きるために

幼い息子と、かつて喜久雄の恋人だった春江を妻として伴い、戻ってきた俊介。

そこで、喜久雄にその座を奪われ追い出された、悲劇の後継者が技に磨きをかけて帰ってきた、という設定でテレビ番組などに出演。

これが評判となり、舞台も成功します。

一方、喜久雄は後ろ盾ほしさに俳優の吾妻千五郎の娘をとりこみます。

喜久雄の思惑に気づいた千五郎は結婚に大反対。

千五郎の関わる舞台にも立つことができず、あわや俳優廃業か、と思われた喜久雄ですが…。

まとめ

喜久雄と俊介、ともに家族を持っての後半です。

テレビが普及し、視聴者が求めるものを作るために、芸能界のあり方さえも変化していく時代。

そうした大きな流れに飲み込まれ逆らいながらも舞台に立ち、苦しみながらも彼ら見たい、感じたいと思っていたものは何だったのでしょうか。

人間の業を己に取り込み、芸に昇華させるその炎は、その激しさのあまり自身をも燃やし尽くしてしまうものなのかもしれません。

<こんな人におすすめ>

歌舞伎役者の生き様を描いた話に興味がある
役者にとって舞台はどのようなものであるかを描いた話を読みたい
吉田 修一のファン

ぬこ
ぬこ

芸に身を捧げる、って

まさにこういうことだな。

喜久雄の芝居を見てみたくなるなあ。

のこ
のこ

舞台の上で生きている実感が

持てるのは、俳優として素晴らしいけれど

人間としては苦しみを感じる部分がありそうね。

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