こちらは浪人生の徳山が
あるキャバ嬢と交際することに
よって大きく変貌していく姿を
描いた物語よ。
変貌…。それは良い方に?
それとも悪い方?
キャバ嬢は残酷な実話を好み
物語を嫌っているの。そして
人類は滅んでも良い、と思って
いるのよ。
おお…。そりゃい良い方向には
行かなそうだな。二人はいったい
どうなってしまうんだ?
『死にたくなったら電話して』 李龍徳 (著) 河出文庫
あらすじ
実家を出て居酒屋でアルバイトをしながら勉強する日々を送る浪人生の徳山。
ある日、バイト仲間に連れられて訪れたキャバクラで、ナンバーワンキャバ嬢の初美と出会う。
残酷な世界を語り、物語を嫌う初美にのめり込んでいく徳山。
やがて二人は同棲し、外界との関係を断っていく。
初美の言動と行動に次第に感化されていく徳山
三浪となった徳山は、予備校へは行かずアルバイトをしながら生活費を稼ぎ、受験勉強をしていました。
アルバイトの仕事ぶりは今ひとつですが、顔の良さは誰もが認める徳山。
そんな彼の心の中は卑屈な劣等感が渦巻いています。
ナンバーワンキャバ嬢の初美に気に入られ付き合いはじめますが、彼女は古今東西のあらゆる残虐な行為に詳しく、その内容を徳山に聞かせます。
友だちはいらない、カリスマの実態は空洞、物語や感動は金もうけのために悪用される…。
そんな言葉を発する初美にのめりこんでいく徳山は、バイト仲間や古くからの友人たちとの関係に軋みが生じていきます。
まとめ
世界で起こった残虐な行為は、人間の尊厳など表向きのことであり、実際は踏みにじられることが多々ある。
人間はつまらなく、くだらない存在であって滅びても良い。
初美の言葉は、徳山の頭の中をこんな思考へと誘導していくようです。
徳山と出会えた初美が感じる喜びは、未来を紡ぐパートナーではなく、暗く深い闇へと手を取り合って進んでいける相手を見つけたからなのかもしれません。
破滅へ導く者と導かれていく者の姿をつぶさに描いた衝撃の物語。
<こんな人におすすめ>
破滅への道へと突き進んでいく男女の姿を描いた小説を読んでみたい
人間に生きる価値を見出せない者の思考や行動を綴る物語に興味がある
李龍徳のファン
巻き込む方もアレだけど
巻き込まれる方も大概だな。
逃げるだけの力がない。
やっかいな相手に見込まれたのが
不幸とも言えるけど、巻き込まれない
強い自我を持っていないからこそ
選ばれてしまったのかもしれないわね。
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