こちらは異国の地で亡くなった
学生時代の友の足取りを辿るうちに
驚くべき真実に出会う研究者の物語よ。
ほほう、研究者か。
何の研究をしているんだ?
細菌の研究よ。パリで開催された
学会に出席した佐伯は、一人の
老人から話しかけられ、学生時代の
友人・黒田が事故死ではなく
自殺だったことを教えられるの。
なるほどね。その友人黒田が
どんな経緯で亡くなったのかを
探っていくわけだな。気になるぜ。
『白い夏の墓標』帚木 蓬生 (著) 新潮文庫
あらすじ
パリで開催された肝炎ウィルス国際会議に出席した佐伯は、講演を終えた後、一人の老人に声をかけられた。
アメリカの陸軍微生物研究所のべルナールと名乗るこの老人は、かつて佐伯が机を並べて研究をしていた友人、黒田の上司であり、友人だったのだと言う。
そしてアメリカで事故死したと聞いていた黒田は、実はフランスで自殺していたことを佐伯に告げる。
黒田の墓の場所を伝え、その墓の世話をしている女性にこの封筒を渡してくれないか、とベルナールに頼まれ、二十数年前の黒田とのことを思いながら、佐伯は彼の足取りをたどる。
異国の地で命を落とした友人は何を思い生きてきたのか
昭和二十七年。
北東大学細菌学教室で大学院生の佐伯と専修生の黒田は机を並べ、免疫に関する研究を行なっていました。
金がなく皮肉屋で、人一倍感性の強い心を持つ黒田の、ふとしたときに見せる優しさに佐伯は好感を持っていました。
やがて黒田の研究成果が米軍の目にとまり、米国の研究所へと行くことに。
翌年の秋、教室に黒田の事故死が知らされます。
その知らせを受け、精神病院にいるという黒田の兄を訪れた佐伯は、昔の黒田の様子を知る看護婦から過去の話を聞きます。
それは佐伯の知る、シニカルな黒田になるのも頷ける出来事でした。
フランスの田舎、ウスト村にある黒田の墓参りの後、墓の世話をしてくれているといういヴィヴ夫人をたずねた佐伯ですが、帰ってくれと追い返されてしまいます。
ショックを受け混乱する佐伯。
しかし、誤解であったと宿の女主人から聞き、黒田が遺した一冊のノートを渡されます。
そこには微生物研究所の事が書かれていました。
まとめ
研究所の看板の裏で効率的に人を死に至らしめるための細菌研究にいそしむ科学者たち。
新しい可能性を見出す喜びと己の行為が呼ぶ未来の苦しみにい心がせめぎ合う彼らの心境が、くっきりとした輪郭を持って読む者の胸に迫ります。
研究者として、人として生きる者の葛藤を描く人間ドラマとして、そして彼に起きた真相を探るミステリーとしても楽しめる物語です。
<こんな人におすすめ>
優れた免疫学研究者であった友人の死の謎を探るミステリーに興味がある
研究者の矜持や葛藤を描いた物語に興味がある
帚木 蓬生のファン
おおお
研究者の苦しみや葛藤がビシビシと
伝わってくるぜ…!!黒田を理解
しようとした佐伯、いい奴だなあ。
二人の友情にもグッとくるぜ。
一人の人間がいかに多くのもの、
大きなものを背負ってきたのか。
読後に思わずため息が出るような
深い余韻の残る物語ね、
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