
こちらは同級生からカルトを
始めないかと持ちかけられた
女性を描くお話のほか、エッセイ
なども含む11編を収めた短編集よ。

カルトに入会しないかっていう
誘いではなく始めるってこと?

金儲けのために考えついたのね。
始めは断っていたけれど
お金や物の価値について考え
始め、最後には自分も体験しようと
イベントに参加するの。

なるほど。そこに参加して
何か価値観の変化とか
あったんだろうか。
『信仰』村田 沙耶香 (著)文春文庫
あらすじ
同級生の石毛にしつこくお茶に誘われ、あ、勧誘だなと思った永岡。
その石毛から出てきたセリフは「俺と、新しくカルト始めない?」。
勧誘ではなくて一緒に商売としてカルトをやらないかという話で…。
同級生から「カルト始めないか」と誘われて
石毛は馬鹿だから何かにだまされて引っかかり、友人を勧誘しようとしているのでは。
どんなものにだまされたのかネタとして仕入れ、自分の友人たちに披露しようかと思っていた永岡にとって、それは想像の斜め上をいく提案でした。
「やだよ」と即答する永岡に構わずテーブルに資料を広げ嬉しそうに説明をする石毛。
そんな二人の前にあらわれたもう一人の人物に永岡は驚きます。
それは中学の同級生、斉川さんだったのです。
彼女とは一度しか同じクラスになったことはありませんが、大人しくて真面目であり、賢くて信頼のおける人物として先生から可愛がられるタイプ。
そんな実直で真面目な人間をこんなことに巻き込もうとしているのか、と石毛を睨むと、大学の頃なんと二人は付き合っていたのだといいます。
卒業してからマルチにはまり浄水器を売りまくるようになってしまった斉川さんと付き合いを続けることができず別れたのだそう。
何となく断りきれないままアサミやマユにこの話をすると、彼女たちは笑いながら「ありえない」と盛り上がり、流行りの皿の話題に移っていきます。
斉川さんの浄水器と、この高級な皿に何の違いがあるのか。
気がつけば永岡は斉川さんを教祖として教団のベースを整えるため、石毛との三人での打ち合わせに参加し、最初のセラピーを10万円に設定。
永岡自身も参加することにしたのですが…。
まとめ
好きな言葉は「原価いくら」だった子供時代の永岡は、その金額で喜びを受け取る友人らと距離を感じるようになります。
そんな中、カルトで稼ごう!と声をかけてきた石毛を通してあらわれた斉川さんは、浄水器ではできなかった「人を幸せにすること」を今回のカルトでリベンジしたいのだと言います。
お金、幸福、そして信仰。
それらは、疑問を感じることなく生きていけるための道具としては同じような役割を果たすものなのかもしれません。
作者流の一筋縄ではいかないラストに何とも言えぬ可笑しさと情けなさと、信じるものは救われる一方で救われないこともまた真実なのかも、と思う衝撃の物語を収めた短編集。
<こんな人におすすめ>
カルトを始めようとしたり参加しようとしたりする若者たちを描いた話に興味がある
信じるものを得たいと熱望する心を客観的な目線で描いた物語を読んでみたい
村田 沙耶香のファン


いやはやなんとも…
ちょっと笑っちゃうところも
あったりして人間って愚か
だよなあ。

自分にとっての信じるものは
何なのか。それは自分自身で
探すしかないものなのかも
しれないわね。
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