
こちらは『世田谷みどり助産院』の
第二弾よ。おっぱい先生こと律子の
もとに様々な悩みを抱えた母親が
やってくるの。

産後は心も身体も何かと
しんどくて大変そうだな。
今回はどんな母親が訪れるんだ?

コロナ禍を経て、体調がなかなか
戻らない母親が登場するの。
赤ちゃん訪問で自宅へとやってきた
保健師からこの助産院を紹介されるわ。

近くに何かあったら助けてくれる
存在がいたら安心なんだけどなあ。
そうもいかないのかな。
『世田谷みどり助産院 陽だまりの庭』泉ゆたか (著)光文社文庫
あらすじ
東急世田谷線上町駅から徒歩5分。
住宅地の一角にある古い洋館で母親たちのこわばった心や身体をやさしくほぐしていく、院長であり助産師である「おっぱい先生」こと律子。
この母乳外来専門の「世田谷みどり助産院」には様々な悩みや思いを抱えた母親が訪れる。
寂しい思いを飲み込み一人で育児に奮闘する真由美
三十八歳で結婚し、三十九歳で妊娠し出産した真由美は時おり動けないほどの腹痛が起こることがあります。
コロナ禍で里帰りをしない選択をした真由美。
当時は夫の健太がテレワークをしていたので心強かったのですが、コロナ禍が過ぎた途端に忙しくなり、月の半分ほどを出張に行くように。
寂しいと言ってはいけない。
そんな思いで健太を送り出し、娘である美咲のお世話をしていたところ、おっぱいを飲まずに苦しそうな表情であることに気づき、同時に強いお腹の痛みがやってきて…。
保健師の赤ちゃん訪問で紹介してもらったみどり助産院に向かった真由美ですが、名前を告げたものの「体調が悪い」とキャンセルし家に帰ってきてしまいます。
オンラインでみどり助産院へ相談した真由美は「おっぱい先生」からミルクを使うことを提案されますが、母乳育児への強い思いを持つ真由美は拒否反応を起こします。
ひとまずはベビースケールを入手し、美咲の体重増減からどれくらいおっぱいを飲んでいるかを調べることに。
そんなある日、真由美の家に急に実家の父親がやってきて…。
まとめ
「育児は他人との関わり」。
淡々とした口調で話すおっぱい先生こと律子の言葉は孤独や不安でいっぱいになった母親たちの耳にすっと染み込んでいくようです。
他人と距離を置くことを余儀なくされるようになったコロナ禍を経て、赤ちゃんのお母さんへの手助けには制限が起こり、そしてまたネットの情報などから多くの育児情報が流れてくる状況で、産後のホルモンの変化や体の疲れからそうした不安の波に飲み込まれてしまう母親が登場します。
母親が赤ちゃんを見守りお世話しながら育てているように、その母親自身もまた誰かに見守られるべき大切な存在であること。
そんな大事なことを改めて思い出させてくれる、雨上がりに差し込む光のような穏やかなあたたかさを感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
子育てに正解がないからこそ悩む母親とそこに寄り添う助産師を描いた物語に興味がある
前作『世田谷みどり助産院』を読んだ
泉ゆたかのファン


そうだよなあ。母親が
「助けて」って言える環境が
あるというのは大切なことだよな。

小さな命を守るために様々な
手を借りること。人との距離が
コロナを経て変わった今だからこそ
様々な方法を考えながら上手に
利用できるといいのかも。
前作『世田谷みどり助産院』のイラストブックレビューはこちらからご覧いただけます(改題前のタイトル『おっぱい先生』で紹介しています)。
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