
こちらは妻の妊娠をきっかけに
実母が変わっていく様子と封印されていた
過去の記憶が少しずつ呼び起こされていく
物語よ。

初孫なのかな?そしたら
親ってフィーバーしそうだけど。
そういう感じでもないのか?

切迫流産の診断を受けた妻を
自分の家で面倒を見ると
申し出てくれたのはいいけれど
監禁状態にしてしまうのよ。

怖すぎだろ。息子を取られて
嫁を恨んでいるとか?
それとも奥にもっと複雑な
事情が隠されているのかも。
『イオカステの揺籃』遠田 潤子 (著)中公文庫
あらすじ
新進気鋭の建築家、青川英樹は妊娠の報告のために妻の美沙と実家へ向かった。
美しいバラが咲き乱れ、家の中には塵ひとつ落ちておらず、自身も変わらぬ美しさを持つ母。
しかしお腹の子が男の子とわかると、まるで別人のように豹変する。
一方英樹はしまいこまれていた幼き日の記憶が少しずつ明らかになっていく。
美しい母の過去に何があったのか
庭一面に様々なバラを植え、ローズティーやバラを使った菓子やサシェなどを作り「バラの教室」まで開いている英樹の母は56歳の今も美人。
おっとりとした口調ながら、英樹とバラのことしか話題にせず家事を完璧にこなす英樹の母を、妻の美沙は少々苦手に感じています。
英樹の妹、玲子は母とは気が合わず就職時に家を出ており、父親の誠一は若い女性と十年にわたる不倫をして相手に振られてしまいます。
美沙のお腹の子が男の子とわかるとうっとりとした表情を見せた母は、その後英樹たちの家に真っ赤なバラのポプリが詰まったガラスケースを送ります。
ファーストシューズボックスであることは理解できたものの、英樹は不快さを感じ美沙も非難の色を示します。
しかしこれはほんの始まりにすぎなかったのです。
そして妻の妊娠は英樹の記憶の扉を開くきっかけとなります。
英樹には幼い頃に亡くなった弟がいました。
毎日哀しむ母親を子供心に何とかしたいと考えた英樹は、母を遊園地に誘います。
二人で観覧車に乗り、もっと乗っていたいという英樹をなだめた母はオレンジジュースの入ったグラスを取り出し乾杯するのです。
そんな中、切迫流産で絶対安静となった美沙は、実母の協力を得ることができず、英樹の実家でしばらく世話になることになったのですが…。
まとめ
恵まれた、豊かなように見える家族は実はバラバラで、ただ母が強く息子を愛していました。
しかし、その愛の方向は歪であり、孫が男の子と知ると行動は次第にエスカレート。
連絡、突撃、贈り物に嫁の監禁まで。
その行動の理由は、彼女が次男を亡くした時と、さらには少女時代からの生い立ちにまでさかのぼります。
因果や運命に弄ばれた一人の女人生と言える一方で、決して屈することのない一面も垣間見えます。
闇の中に差し込んだ息子という一筋の光を追い求めた母親と、その姿の表面をとらえる家族の姿に複雑な思いを感じる、恐怖だけではない、心に刺さる棘ののような物語です。
<こんな人におすすめ>
お腹の子供が男の子とわかったとたん豹変していく義母を描く物語に興味がある
一見恵まれたように見える家庭の中に潜む暗い影と忌まわしい記憶を描いた家族小説を読んでみたい
遠田 潤子のファン


すごいなこれは…。
この母親にかける声が
見つからないぜ…。

その行動の奥に隠された真実に
胸の奥から震えが来る
いつまでも読後の余韻が残る
物語ね。
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