
こちらは江戸の動物専門の
養生所での出来事を描く
『お江戸けもの医毛玉堂』の
第三弾よ。

凌雲と美津夫婦の進展具合も
気になるところだよなあ。
今回はどんな動物たちが
やってくるんだ?

鏡を見るとそこから離れなくなる
犬が登場するわ。主人の声がけにも
応えずに鏡に夢中になっているの。

ええ??そんな自分大好きな
犬っているのか?なんとも
不思議な話だなあ。
『うぬぼれ犬 お江戸けもの医 毛玉堂』泉 ゆたか (著) 講談社文庫
あらすじ
かつては小石川養生所で評判の医者だった凌雲と、妻の美津が動物の病を診る『毛玉堂』には、様々な症状を抱えた動物とその飼い主がやってくる。
凌雲が外に出ていたある日、長く白いふわふわした毛を持つ可愛らしい犬を連れてやってきた飼い主は、この犬の妙な姿を放っておいて良いものか相談したかったのだという。
その妙な姿とは…。
犬が鏡に夢中になる理由とは
白くふわふわとした長い毛に潤んだ大きな目。
千駄ヶ谷の湯屋の源三郎が連れてきた可愛らしい犬は「お姫」と名付けられ、湯屋の客たちにも可愛がられている看板犬。
そのお姫が鏡を見ると熱心に覗き込み、源三郎が呼んでも知らんぷり。
そんなに自分の姿が愛しいのかと、ほほえましくもあるものの、商売柄鏡がたくさんあるため客の邪魔になるのではと源三郎は心配しているようです。
後日、お美津とともに源三郎の湯屋へとやってきた凌雲は、鏡に夢中になっているお姫の様子をじっと観察します。
源三郎の「お姫」と呼ぶ声かけにも振り返らず、ますます顔を鏡に近づけていくお姫。
すると凌雲は「お美津。薬箱だ。小刀はすべて研いであったな?」と指示を出し…。
まとめ
一緒に暮らしている犬の黒太郎の老いと惚けの介護、幼馴染の仙の妊娠、そして女けもの医・鈴蘭の登場と、ゆるやかではありますがそれぞれの立場で確実に時は流れていきます。
妊娠により己のアイデンティティが揺らぐような不安を感じるお仙をなだめ励ましつつ、女医として一人で立ち責任を持って仕事にのぞむ鈴蘭を見て自信をなくしかけてしまうお美津。
しかしながら動物と飼い主の間をつなぎ、ケアを行う発想や動物に向ける心からの思いやりは、お美津にしかできないことでもあります。
夫婦でありながらも何とももどかしい凌雲と美津の距離感もわずかながら縮まったようです。
もの言わぬけものたちに気を配り寄り添い、人もけものも幸せに暮らす道を助ける。
そんな二人の幸せと活躍を願うシリーズ第三弾です。
<こんな人におすすめ>
江戸時代のペット事情に興味がある
「お江戸けもの医 毛玉堂」シリーズのファン
泉 ゆたか のファン


飼い主のちょっとした違和感を
動物の症状とつなげて診断できる
凌雲はさすがだなあ。

一方、飼い主の思いに寄り添って
ケアを行い、けものと人と良い関係
づくりを促すことを無意識にできるのが
美津なのよね。
けもの医としてぴったりな夫婦ね。
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