
こちらは会津の百姓の娘・さよが
鷹の雛と出会い惹かれていくの。
その後幕末の中、時代の波に
飲み込まれていきながらも
懸命に生きていく姿を描いた物語よ。

幕末の会津といえば戊辰戦争か。
百姓も戦争に巻き込まれたのかな。
そんな時代で鷹とどう関わっていたんだ?

当時、鷹の雛を見つけると
鷹匠に預ける決まりがあったの。
さよは縁あって年頃になると
鷹匠のもとに嫁ぐのよ。
そこで鷹の世話もすることになるわ。

へええ。好きな鷹の面倒が観れるなんて
良かったじゃないか。
しかし幕末の時代、穏やかに暮らす
というわけにもいかないのかもな。
『会津恋い鷹』皆川博子 (著) 春陽文庫
あらすじ
時は幕末。
会津の山中で鷹の雛と出会い、青い目を見たとたん「眸んなかに、空があるんじゃ」とその魅力に強く惹かれた少女さよ。
縁あって鷹匠に嫁ぐが、倒幕への動きは全国に波及し会津藩も朝敵として攻撃を受け始め、さよの夫も戊辰戦争に向かう。
夫の留守中、鷹に向き合う小夜は次々と抗えぬ大きな力に巻き込まれていく。
鷹の青い目に魅せられた少女さよの運命とは
木地師の弥四郎の後を追い、山中で鷹の雛を目にした十三歳の少女、さよはその水色の眸に見惚れます。
捕らえた鷹は御鷹部屋へ届け、献上するために鷹匠が訓練する仕組みとなっていますが、異国の黒船が来て以来将軍家の御鷹狩りは行われておらず、届けても喜ばれないかもしれないという話でした。
季節がめぐり秋も深まる頃、さよのもとに縁談の話が舞い込みます。
鷹を届けた鷹匠の長江周吾の妻に、という申し出でした。
百姓である横山家はさよを一度分家の養女とし、行儀見習いをしてから婚儀をとりおこなうことに。
流されるままに身をまかせ周吾の妻となったさよですが、周吾の姉である小竹に厳しく礼儀を教え込まれる日々。
やがて周吾は戊辰戦争へ向かい、女たちが鷹の世話をするように。
新政府軍からの総攻撃を受け、鷹を連れて必死で実家へと戻ってきたさよ。
二人の兄はどちらも戦に出ているといいます。
祖母と父がいるこの家の土蔵で鷹のための場所を整えようとするさよですが、この家にも戦の火が及んできて…。
まとめ
地域の肝煎りである百姓の娘として育ったさよは、つつましくも豊かな自然の中でのびのびと育ちます。
幼い鷹の青く澄んだ瞳に魅せられ、鷹匠である夫に嫁ぎますが、武家の心得や所作を学んでも、鷹匠としてのあり方を学んでも今ひとつピンとこない様子のさよ。
夫や兄たちは戦に向かい、父や祖母も新しい波に勢いをつけた人々の手にかかり死を遂げます。
多くの荒波がさよを襲いますが、やはりさよの心をとらえ続けたのは鷹でした。
家も地位も出身も、何もかもから解放された存在が、さよを惹きつけたたのかもしれません。
生きようとする、さよと鷹の強く美しく、そして哀しい姿に涙が止まらなくなる物語です。
<こんな人におすすめ>
幕末に生き時代の波に翻弄されながらも鷹に焦がれて生きた女性の物語を読んでみたい
江戸時代の鷹匠とそれに関わる人々を描いた話に興味がある
皆川博子のファン


鷹はさよにとって自由の象徴
だったのかもしれないなあ。
あと何より生きているという
実感をもたらしてくれたのかも。

壮絶人生だけれど穢れた
印象はなくスッと背筋が
通った感じがするのは
鷹がいつも胸にあるからかも
しれないわね。
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