こちらは横浜のコインランドリーが
舞台よ。店に訪れる客は洗濯物とともに
様々な悩みや問題を抱えてやってくるの。
ほほう。そこへコインランドリー店の
スタッフがビシッと回答を?
店主は洗濯についてのアドバイスを
お客さんにするの。洗濯物の悩みは
お客さんの生活や心の悩みと
つながっていたりするのよ。
なるほどね。落ち込んでいるときには
洗濯する気力も起きないしなあ。
スタッフやお客たちは洗濯物から
どんなやりとりをしていくんだろう?
気になるぜ。
『横浜コインランドリー』泉ゆたか (著) 祥伝社文庫
あらすじ
三年間働いた職場を辞め、引きこもり生活をしていた中島茜。
このままではいけないと、洗濯をしようとしたところ洗濯機が故障。
スマホで検索して見つけた「横浜コインランドリー」へ入ると店長の新井真奈が迎え入れてくれた。
真奈やコインランドリーへやってくるお客たちと関わることで、茜の日常は動き出し、心の奥底にしみついた汚れもいつしか綺麗に洗われていく。
心の「汚れ」をやさしく落とすコインランドリー
ブラックな不動産会社に勤めていた茜。
同僚が次々と辞めていく中、何とかふんばっていましたが限界を感じて退職。
家にじっと引きこもる生活を送っていました。
半月が過ぎた頃、「このままはいけない」と自分を奮い立たせ洗濯しようと考えます。
しかし洗濯機が故障していて使えません。
絶望した後、近所のコインランドリーをスマホで検索し、表示された「横浜コインランドリー」へ。
可愛らしいがしっかりとした落ち着きと清潔感のある店長、真奈がコインランドリーの使い方の説明をしてくれます。
乾燥まで終えた洗濯物はやさしい香りとやわらかな手触りで茜は心があたたかな温もりで満たされます。
そして茜はこの店でアルバイトをすることに。
店には様々な事情を抱えたお客が洗濯物を抱えてやってきます。
真奈にアプローチしたい男性客、洗濯物を長時間放置する若い男性客、幼い娘を持つシングルマザー、小ぎれいだが全身から強烈な匂いを放つ老人…。
洗濯の方法や頻度などをアドバイスする「洗濯相談」から見えてくるお客たちの生活と、心に抱える悩みや問題とは。
まとめ
スッキリとした清潔感あるたたずまいの店長、真奈はお客たちの問題に踏み込み過ぎず絶妙な距離感で解決の道へと導きます。
心の奥にしみついた悩みや苦しみといったものは、放置しているとより濃く、そして広がっていくことも。
洗濯という行為は衣服の汚れを落とすと同時に、こうした心の「汚れ」を洗い流すことにもつながっているのかもしれません。
清潔な衣類に身を包むことが、こんなにも心の平穏に影響するのだと改めて気づかされます。
そして、これまで傷ついてきた茜だからこそ、その大切さをより感じられたのかもしれません。
折り目のないまっさらなハンカチのような真奈の生い立ちは大きな驚きとともに、深く納得するものがあります。
疲れている時や元気のない時に、スッキリと気分良くさせてくれる、そんな「お洗濯」物語です。
<こんな人におすすめ>
様々な悩みを抱えた人たちが集うコインランドリーの物語に興味がある
生き方と洗濯の関係を描いた話を読んでみたい
泉ゆたかのファン
おお〜 「気持ちのいい」物語だな!
読む方の心までもが洗われたような
気分になるぞ。
悩みが深くまでしみ込んだものほど
洗い流せた時の喜びは大きく感じる
のかもしれないわね。
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