こちらは『あきない世傳 金と銀』
シリーズの特別巻、上巻よ。
完結を迎えた登場人物たちの
その後を描いたお話なの。
おお〜 幸が帰って来るのか!
他のメンバーも年を重ねて
気持ちや考え方にも変化が
あったりするのかな。
そうね。老いを感じて引退を
考えるお竹、大坂の五鈴屋を
出た惣次のその後など、それぞれの
分岐点となる内容でもあるわね。
うわっ そりゃ気になる!!
惣次が保晴になった経緯とか。
いったい何があったんだろうなあ。
『契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻(上)』
髙田 郁 (著) ハルキ文庫
あらすじ
大坂の呉服商「五鈴屋」の江戸店を成功させたい。
そんな思いで、江戸の地で商いを続けてきた幸。
店の存続や身内の裏切りなど数々の困難に出会いながらも『買うての幸い、売っての幸せ』を胸に力を尽くしてきた。
シリーズ番外編となる本作では、五鈴屋を出奔した惣次のその後、真面目な支配人・佐助の恋、老いを自覚し、この先の生き方に悩む小頭役のお竹、そして長いあいだひとすじに幸を思い続ける賢輔の決意の四篇を綴る。
ようやく見つけた自分の生きる場所
商才を発揮する妻・幸に愛しさよりも嫉みが上回り、店の大切な金を奪って大坂の町を後にした惣次は江戸へやってきます。
人々の好みも商いの方法も異なる地で、持ち出した金を元手にどう商いを始めるかと考えていた惣次。
馴染みの両替商をたちの悪い客から救ったことをきっかけに、店主の娘の婿となり、両替商井筒屋を継ぎ、三代目保晴となります。
妻の雪乃は疱瘡跡が残り、さらに気鬱が重なり、周囲から幽霊のよう、と噂されています。
幸と違い、着るものや色味などに興味を持たない雪乃ですが、惣次にとっては自分を脅かすことのない、安心できる存在。
そして惣次に全幅の信頼を寄せる義父。
惣次はそんな彼らと家族になり、順調に商いの規模を広げていったのですが…(「風を抱く」)。
まとめ
幸の才能に嫉妬し、店の金を持ち逃げするという、「悪役」の惣次。
新天地江戸では両替商と縁ができ、跡を継ぐことになります。
幽霊と噂される娘と添うても、五鈴本店のトラブルを耳にしても「おもしろい」と心の中でニヤニヤしている様子の惣次ですが、妻や義父を気遣い、見た目ではなく本質を見極める姿は、誠実な彼の部分が隠し切れずに表に出てきてしまっているようです。
自らを「悪役」として演じようとしていた惣次が江戸で大切な人々と出会い、己の居場所を見つけられたこと、そして迎えるラストには涙が止まりません。
他にも佐助やお竹、賢輔たちが主役となる物語が掲載されていますが、彼らの人物像がとても深く、この物語には脇役は存在しないのか!というくらいにそれぞれにドラマのある人生を送っています。
五鈴屋に関わる彼らに再び出会えた喜びと感動で胸が震える短編集です。
<こんな人におすすめ>
大阪の呉服商が江戸で出店し、商いそして生きていく姿を描いた物語に興味がある
『あきない世傳 金と銀』シリーズのファン
髙田 郁のファン
控えめに言って最高だよね
このシリーズ…
下巻が出るのが楽しみすぎる!!
永遠に続けて欲しいぞ。
商いへの思い、そして人との
出会いと別れ、触れ合う思い。
心の底まで染み渡るような
『思い』が溢れる物語ね。
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