
こちらは桜野町の桜風堂書店と
関わりのある人々が
この町で体験した不思議な出来事を
描く連作短編集よ。

不思議な出来事?
いったいどんなことが
起こるんだ?

小学六年生の仲良し3人組の
男の子が森の幽霊屋敷と呼ばれる
屋敷であるものを見つけるの。

え ま、まさか本当の幽霊…?
子供たちはどうなっちゃうんだ!?
『桜風堂夢ものがたり』村山 早紀 (著) PHP文芸文庫
あらすじ
『森の幽霊屋敷』とやばれている町の人々も近寄らない桜野町の森の奥深くに建つ洋館へ冒険に向かうことになった、桜風堂書店の手伝いをしている小学六年生の透。
雨の降る中、洋館へ向かった仲良し3人組だが(秋の怪談)。
桜野町からの帰り道で迷ってしまった柳田を救った声とは(夏の迷子)。
桜風堂に関わる人々と彼らに起こる不思議で優しい奇跡を描く連作短編集。
森の中に佇む幽霊の正体とは
桜野町にやってきて二年が過ぎた透は、友人の楓太から『森の幽霊屋敷』にみんなで行ってみないか、と誘われます。
透は昔、その話を祖父に話してもらったことがあったのですが、怖くて最後まで聞くことができませんでした。
気乗りしない透に対し、ホラー小説を読むのも書くのも好きな音哉は大いに興味をそそられている様子。
二人から「透は無理しなくてもいいよ」と言われたものの、スクールバスの中から見えた幽霊屋敷の窓に本棚にぎっしりと詰まった本と、玄関の前にたたずむ白く長い髪の黒い服を着たおばあさんがいるのを見た…ような気がしました。
本が好きな幽霊なのかな。
「ひとは、一冊本を読むごとに、その本の分だけ、優しくなれるんだと信じている」という尊敬する祖父の言葉を思い出し、あの森にいるのは本好きの寂しい幽霊なのかもしれない、と考えた透は意を決して仲間たちと冒険へ出かけることを決意します。
天体観測をする、とうそをついて夜に家を出てくることに後ろめたさを感じつつ、幽霊屋敷へ向かうも途中で雨が降り出します。
屋敷を近くで見て帰ろうという話しになり、たどりついた玄関から屋敷を見上げると、やはり本が詰まった本棚と部屋を蒼白く照らしている水槽が。
「この洋館、ほんとに幽霊屋敷なのかな?」と首をかしげる透でしたが…(「秋の怪談」)。
まとめ
多くの人を優しく受け入れ見守る桜野町は、人ならざる者と出会えたり不思議な奇跡が起こる特別な空間でもあるようです。
傷ついた心を抱いた人々が静かな環境を望めばそれを整える協力を、大人たちが知恵を絞りながら行なっています。
しかし、その傷をいやし乗り越えるきっかけを与えてくれるのは、全く関わりはないけれども本の世界に救われてきたという経験を持つ者同士の世代を超えたつながりなのです。
本の世界を愛し、人の人生に思いを馳せる人々に優しい奇跡が訪れる、あたたかな涙が流れる感動の物語です。
<こんな人におすすめ>
本を愛する人々が体験する不思議な街での出会いと出来事を描く物語に興味がある
『桜風堂』シリーズのファン
村山 早紀のファン


町の人々の配慮ある優しさが
奇跡を呼び起こしているのかも
しれないなあ。

胸の奥にそっとしまっておいた
大切な思い出を言語化して
くれたようなあたたかな気持ちに
満たされる物語ね。
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