
こちらは十七歳の頃に出会った
ガールフレンドが行方不明になり
本当の彼女がいるという、
高い壁に囲まれた街へ向かうお話よ。

本当の彼女?その彼と会っていた
女性は本当の自分ではなかったって
ことなのか?

彼女自身がそう彼に伝えていたの。
彼女に会いたいと望んで
その街の図書館で「夢読み」として
働き始めるのだけど、共に過ごした
記憶は失われているの。

ここではないもう一つの世界ってことか。
覚えていないのは切ないよなあ。
でも彼女と再会できたこの世界で
彼は生きていくことになったんだろうか。
『街とその不確かな壁(上巻)』村上春樹 (著)新潮文庫
あらすじ
十七歳のぼくに、ひとつ年下のきみはその街のことを教えてくれた。
夏の夕方、川べりに腰を下ろし「本当のわたしが生きて暮らしているのは、高い壁に囲まれたその街の中なの」と話すきみはある時突然に姿を消した。
その街に入りたいと、どれほど強くぼくは望んだことだろう。
そこで本当にきみに会いたいと。
高い壁に囲まれた影のない人々が暮らす街
街は高い壁に囲まれていて、中に入るのはむずかしく、出ていくことは更に難しいのだとか。
そこに入る方法はただ望むこと。
その街の古くて小さな図書館で働いていて、「夢読み」として働くことになるぼくの仕事を手伝うのだといいます。
そしてその街で出会ったとしても、そこにいる自分はぼくのことを何ひとつ覚えていないということも。
きみが街の成り立ちを語り、ぼくが質問しきみが回答し、街の具体的な姿が記録されていきます。
しかし、ある時から彼女の連絡は途絶えてしまいます。
「本当の彼女に会いたい」と望んだぼくは、気がつくと高い壁に囲まれた街にいました。
この街では影を持つものはおらず、ぼくの影も守衛によって引き離されてしまいます。
図書館で夢読みとして働き始めるぼくを手伝ってくれるのは一人の女性。
どこか見覚えがあるような気もするのですが、うまく思い出すことができません。
街での暮らしにも慣れてきた頃、ぼくと離れていた影の具合が良くないことを聞き、影がいる場所へと向かいます。
本体と離され寿命も近い、という影はぼくに向かってある提案を持ちかけてきます。
「あんたはおれともう一度一緒になって、壁の外の世界に戻るべきだと思います」という影の言葉に驚き、戸惑うぼくですが…。
まとめ
ガールフレンドが失踪し、彼女が「本当のわたしがいる」と話していた高い壁に囲まれた街、影を持たない人々が暮らす街へといつの間にか入り込んでいたぼくは、影と離され彼女に手伝ってもらいながら他人の夢を読むという仕事をしています。
入るのは簡単でも出ることは難しいというこの街の隠された部分を影から知ったぼく。
元の世界に戻るべき、という影の提案にぼくが下した決断とその後に取った行動とは。
今後の展開が気になるもう一つの街、もう一人の自分の物語。
<こんな人におすすめ>
影を持たない人々が暮らすもうひとつの街を描いた話に興味がある
「本当のわたしがそこにいる」と彼女が話した街がどんな様子なのか木になる
村上春樹のファン


影と切り離されたもう一人の自分か。
街にいる間は彼女との関係を
思い出せないのももどかしいよな。

今いる世界に違和感を覚えているのには
理由があるのかもしれないわね。
下巻でどのように展開していくのかが
気になるわね。
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