
こちらは『街とその不確かな壁』
の下巻よ。町の小さな図書館の
館長として働く主人公が一人の
少年と出会うことで物語は動き出すの。

前館長の子易さんも不思議な人
だったよな。その少年はどんな
人物なんだ?

一度読んだ本は全て記憶できる
という能力の持ち主なのよ。
そして彼は主人公が知る
高い壁の内側にある「街」へ
行きたいようなの。

えっ その街のことをなぜ
少年は知っているんだ?
そして少年はその街で何を
しようとしているのか…。
『街とその不確かな壁(下巻)』村上春樹 (著)新潮文庫
あらすじ
勤めていた会社を辞め、町の小さな図書館の館長として働き始めた私は、前館長の子易さんに様々なことを問いかける。
孤独や悲しみ、そして街や影の存在を。
ある日、私の前に一人の少年があらわれる。彼は影を捨てて壁の内側にある街へ行きたいのだというが…。
少年との出会いと街との関係
紺のベレー帽にチェックの巻きスカートという、少々変わった格好をしているものの、私の質問にていねいに答えてくれる好人物の子易さん。
図書館の優秀なスタッフ、添田さんから子易さんに関する衝撃的な事実を耳にします。
彼の過去、そして現在の事を聞いてからしばらく子易さんの姿が見えなくなっていたものの、久しぶりに図書館の小部屋で会うことができ、私は子易さんと孤独や悲しみ、そして街や壁のことについて話をします。
それから私は、イエロー・サブマリンの絵が描かれたパーカーを着た十六歳くらいの少年から「あなたの生年月日を教えていただけますでしょうか」と声をかけられます。
教えると「水曜日」と少年は答え閲覧室へ行ってしまいました。
少年は学校へ行かず多くの時間を図書室で過ごしており、読んだ本の内容をそっくりそのまま記憶してしまうのだとか。
ある日添田さんから一通の封筒を手渡されます。
あの少年から私に、と頼まれたのだとか。
その封筒の中身を目にした私は驚きます。
そこに描かれていたのは、あの高い壁に囲まれた街の詳細な地図だったのです。
まとめ
街の存在を知っているかのような子易さんには悲しい過去がありました。
そんな子易さんは街に興味を持つ一人の少年と私の出会いをサポートします。
図書館の本を読み尽くし、その内容を記憶しているという少年は、その街に行かなくてはならない、と決意しているのです。
その街で生きることは、この世界からいなくなるということですが、少年の気持ちは揺らぐことがありません。
街から現実の世界に戻ってきたものの、今ひとつ実感の湧かない私は、実は自分が影なのではないかとも考えます。
現実の世界から姿を消した少年は私の夢の中にあらわれ、私に変わって夢読みの仕事をしています。
そしてついに私がこの街から完全に離れる時が来るのです。
影を持つこと、生きている実感を持つこと。
現実で生きるために必要なものは、姿を変え続ける壁と街のように不確かなものであるのかもしれません。
<こんな人におすすめ>
現実と幻想の境にある街と壁の正体を知りたい
『街とその不確かな壁(上巻)』を読んだ
村上春樹のファン


なるほどねえ…。
あるべきところにあるものが
収まったという感じがするな。

生きている実感というのは
変化を続け実態がわからない
この街のように不確かなもの
なのかもしれないわね。
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