こちらは地球が滅亡する一ヶ月前、
いじめられっ子やチンピラ、
シングルマザーや歌手などが
どのように生きていくかを描いた
物語よ。
うおお 地球が滅亡だって!?
本当なら世の中は大混乱に
陥るんじゃないか?
そうね。人々が地球滅亡を
事実として認識し始めると
強奪や殺戮が起こるのよ。
ひええ。そんな恐ろしい状況の中で
生き延びるのも自分らしさを保つのも
至難の技のような気がするが…。
『滅びの前のシャングリラ』凪良 ゆう (著)中公文庫
あらすじ
学校でいじめられている十七歳の男子高校生、江那友樹、四十歳になっても落ち着かないチンピラ、目力信士、友樹を女手ひとつで育てる四十歳の母親、江那静香、二十九歳の伝説の歌姫、Locoこと山田路子。
小惑星の衝突により地球が滅びるというニュースが流れ、荒廃していく世界の中、最後の一ヶ月で彼らに起こったこと、目にしたもの、そして芽生えたものとは。
地球滅亡を前に いじめられっ子が立ち上がる
勉強と運動は中の下、ぽっちゃり体型の友樹は、運悪くスクールカースト上位の井上の席と前後してしまったために、パシリにされたり、気になる女子の前でカッコ悪い姿をさらけ出したりといったイジメに遭っています。
母親にはイジメられているとは言えず、脳内で軽めの呪いを相手にかけつつ何とかやり過ごす日々。
そんなある日、一ヶ月後に小惑星が衝突し、地球が滅亡する、というニュースが流れます。
学校一の美少女でクラスメイトの藤森さんは大好きな歌姫、Locoのライブチケットが当たったので東京へ行く、と言います。
小学生の頃から藤森さんへ思いを寄せていた友樹は、彼女を守るため東京へついていこうと考えます。
東京へ行く、と告げた友樹に母親の静香は五万円のお金と、包丁を破りとった雑誌のページに包み手渡します。
そして「襲撃されたら迷わず逃げろ。殺されるくらいなら、殺してでも生き延びろ」、さらに「惚れた女は命がけで守れ。そんで絶対にあたしんとこに戻ってこい」と伝えます。
母からの思い、そして藤森さんへの思いを胸に彼女の家へと向かうと、そこには井上と、そしていつもつるんでいる男子二人の姿が。
女ひとりでは危険だと説得する井上に渋々了承した様子の藤森さん。
仕方なく友樹は、彼らのあとをつける形でぎゅうぎゅう詰めの新幹線の隣の車両へと乗り込み東京を目指します。
しかし彼らを待ち受けていたのは未だかつて見たことのない、略奪と暴力の世界だったのです。
まとめ
世界滅亡まであと一ヶ月の世界。
破壊、略奪、殺人、強姦は日常茶飯事。
力と対応能力がある者が生き延び、またそうして今日一日を生き延びても終わりを迎える時は一緒です。
そんな中、いじめられていた高校生、チンピラヤクザ、シングルマザー、歌姫などがそれぞれにこれまでの人生を振り返り、大切なものの手を離さぬようにしっかりと守り、一日一日を噛みしめるように生きていきます。
彼らが見た世界は凄惨で混沌とした中でも、安らぎや満ち足りたものを感じる部分があったのではないでしょうか。
頭の中に彼らの姿が、言葉がいつまでも残り続ける物語です。
世界滅亡は最悪!!
でも何物にも代え難い愛に包まれている
彼らは最高!!
滅びる瞬間に大切な人が
そばにいてくれたとしたら
それは素晴らしい人生だったと
言えるのではないかしら。
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