こちらは初対面の男女が
軽トラで岐阜から東京への
往復1000キロの旅を描く物語よ。
往復1000キロ!!
結構な道のりだな。それを
なんだって軽トラなんだ?
実家である農家で作られた
大量の米を引き取ることになった
女性が、格安料金で運搬を引き受けて
くれる人を紹介してもらったの。
その人物が軽トラに乗ってやってきたのよ。
大量の米かあ。そりゃ軽トラなら
行けるか。長距離の往復旅、
何やら起こりそうな予感がするぜ。
『田舎のポルシェ』篠田 節子 (著)文春文庫
あらすじ
農家である実家で作られた大量の米を引き取るために、荷物の積め込みと運転を手伝ってくれる相手を同僚から紹介してもらった翠。
当日、待ち合わせの場所に現れたのは、白い軽トラに乗ったいかついヤンキーだった。
岐阜から東京への往復1000キロの旅の途中、台風の接近をはじめとした様々なトラブルに巻き込まれ…。
表題作「田舎のポルシェ」ほか人生の岐路に立つ人々を乗せて走る車の旅を描く、三篇の物語。
軽トラの旅はトラブルがいっぱい!?
全身紫のツナギに、地肌が見えるような丸刈り、胸元には金の鎖…。
同僚の友人である瀬沼剛は軽トラに乗って現れました。
彼の家業である酒屋は潰れてしまい、配達に使っていたハイエースは差し押さえられてしまったのだとか。
早速出発し、高速を走っていると前方を走るフェアレディZが蛇行して走っています。
慎重に追い越しますが、スマホ操作をしていたZの運転手と翠の目が合ってしまい、逆上したZの運転手が翠たちの軽トラを止めさせ、因縁をつけてきます。
窓から手を入れられ、髪をつかまれた翠ですが…。
また、剛の私用で東京の渋谷あたりで一度寄り道。
そこで剛のこれまでの家族とのやりとりや事情を知ります。
続いて翠の実家、奥多摩方面へ。
道すがら、実家の農家では前時代的な環境に育ち、後継ぎの兄は何でも買ってもらえたが自分は大学はおろか、高校までも金がかかるからと見合ったところに通うことができなかったことなどを話す翠。
そして、今回米を引き取ることになった理由も。
軽トラへの積み込みが終わり帰路に向かう途中、何と台風により道路が冠水していて…。
まとめ
実家の呪縛から解放された女と根はまっすぐだが家族とうまくいかなかったマイルドヤンキー。
三十代半ば男女を取り巻く、田舎VS東京、跡継ぎや家族に対する価値観。
互いが自分の先入観で相手と接していますが、非日常なトラブルを協力して乗り越え、またそれぞれの事情を知ることで、次第に「バディ」のような信頼関係を築いていきます。
農家や、田舎で商売を続けることの難しさ、問題点にも触れつつ、それは誰かの故郷であり大切にしたいものだということを気づかせてくれます。
旅の終わりにはそれぞれが通ってきた道筋と一握りの希望が見える。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
農家の現状や後継問題、東京と地方都市の感覚などを描いた中年男女の旅物語に興味がある
コロナにより憧れの舞台に立てることになった女性を描いた物語を読んでみたい
篠田 節子のファン
マイルドヤンキーと独身アラサーの
背景には家族や生い立ち、価値観など
様々な問題があるんだな。
どん底を見てきたように見える彼らだけど
だからこそたくましく、その先は明るい。
走ってきた長い道のりは
彼らの人生とリンクしているかのように
トラブル続き。でも走り抜けた先には
確かな手応えと一握りの希望があるのよね。
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