こちらは子供達と交流が
断絶している一人暮らしの女性の
もとに現れた男性をきっかけに
その関係が変化していく物語よ。
一人暮らしの女性?
なんだか怪しいなあ。
その男、詐欺なんじゃないの?
バツイチ子持ちの娘の婚約者と
名乗ってきた男性に、警戒心を
持つのだけど、少しずつ会話を
楽しんでいくようになるの。
ええ??孤独な老人を狙う
詐欺なのでは…
家族に相談できるといいんだがなあ。
『だまされ屋さん』星野 智幸 (著)中公文庫
あらすじ
夫を亡くし、公団で一人暮らしをしている七十歳の夏川秋代。
そんな彼女の住まいに娘の婚約者を名乗る男が現れた。
人の懐にするりと入り込み、図々しいが憎めないこの男は、本当に娘の婚約者なのか。
また新手の詐欺?
秋代の娘と息子にも問題が起こり、関係を絶っていた家族は再び集まる。
こじれにこじれた家族のつながりをもとに戻すことはできるのか。
娘の婚約者を名乗る謎の男の正体は
夫の格一を亡くし、公団で一人暮らしをしている秋代のもとへ、長女・巴の婚約者だという中村未彩人という青年がやってきます。
巴に自分のことを家族に紹介してほしい、と頼んだところ、うちはいろいろあるから無理と言われ仕方なく一人で訪ねてきたのだとか。
巴に娘がいることも承知の様子。
さらに未彩人はお近づきのしるしに、と言ってカレーを作り始めます。
その味は意外とおいしく、さらに聞き上手の未彩人を相手に気づけばあれこれ喋り、会話が弾むのを楽しむ秋代。
また来ます、と帰った未彩人に不思議と嫌な感じがしなかったなと思う秋代でした。
また、秋代の長男・優志は妻・梨花を怒らせてしまいます。
彼女の思考をなぞり、まるで本人かのように話されることが不快だと言ったあと、梨花は家を出て行ってしまいます。
家を出た梨花は巴と、巴の娘・紗良が暮らすマンションへ駆け込みます。
するとそこには二人の他にもう一人、見知らぬ女性がいました。
同じ団地に住むこの女性・山下夕海は巴の家によくやってくるそうで…。
秋代の次男・春好はかつてサッカーにいい打ち込む少年でしたがケガをきっかけにサッカーをやめてから人が変わったようになりました。
何とか自力で這い上がり大学受験に合格し、就職・結婚と順風満帆な人生を送っていたように見えたのですが…。
まとめ
子供の頃の境遇、親の態度や言葉に傷つけられ続け、大人になってその傷が開き血が噴き出してしまった子供たち。
その傷や痛みはそれぞれで、その問題によって自分の配偶者や子供達が傷つく結果になることも。
大元である母の秋代は良かれと思ってやっていることで、子供たちがどんなに苦しんでいるのかに理解が及びません。
そんな崩壊寸前の一家の前に現れたのは限りなく怪しくて、でも一緒にいると何だか楽しくなるアカの他人。
彼らをみていると家族とか知人とかの線引きが曖昧になっていき、「みんなで楽しく暮らせばいいじゃん!」という大きな気持ちになるのです。
話すこと聞くことで絆は作られていく。
そんな風に感じる家族の物語。
<こんな人におすすめ>
崩壊寸前の家族が全く面識のない人物によって再生されていく物語に興味がある
家族のあり方、人と人の繋がり方を問う物語を読んでみたい
星野 智幸のファン
家族という枠があるからこそ
うまくいかない部分もあるわけだけど
家族も他人もその枠組み自体を
取っ払っちゃうってのはすごいな。
どんな間柄であろうと
話し合える、聞くことができる
関係性が信頼を築くのよね。
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