こちらは主人を失い一人ぼっちになった
ヒョウアザラシのヒョーが
外の世界に飛び出して様々な出来事を
体験していくお話よ。
アザラシが人間の世界に??
この物語の中でいう人間の
世界っていうのはどんな
かんじなんだ?
外を歩くには放射能は避けられず
食べ物は三葉虫やオウムガイ。
新鮮な魚などは相当なお金持ち
でないと手に入れることが
できないのよ。
わあ〜 荒廃した近未来か。
そんな世界でアザラシのヒョーは
どうやって生きていくんだろう。
『チェレンコフの眠り』一條 次郎 (著)新潮文庫
あらすじ
ある暑い夏の日の午後、マフィアのボス、シベリアーリョ・へへへノヴィッチ・チェレンコフは警官隊の一斉射撃を全身に浴び死亡した。
彼と一緒に暮らしていたペットのヒョウアザラシのヒョーは、独り残され空腹に耐えきれず、アザラシ専用のゴルウフカートに乗り、出たことのなかった荒廃した世界へ飛び出す。
外の世界に飛び出したヒョーが見たものと体験したこと
ヒョーの誕生パーティーが開かれボスと仲間たちが楽しく過ごしていたところに武装した警官隊が突入。
チェレンコフはとっさにヒョーを突き飛ばしテーブルの下へとおしやります。
血まみれで息をしなくなったボスと仲間たちが運ばれた後ヒョーは悲しい気持ちで、この家にやってきた頃、泳げなくてみんなが笑ったことなどを思い出していました。
家の中に食べられるものもなくなり、空腹に耐えきれずチェレンコフがヒョーのために用意してくれていたアザラシ専用のゴルフカートに乗り、外の世界へと飛び出します。
カートをぶつけて動けなくなり、そこにあったレストランで食事をするも出てくるのは三葉虫やオウムガイにモンサントのビール。
どうやらボスのところで食べていたものは高級な食べ物や酒だったようです。
オウムガイをたらふく食べたヒョーはボスに教わったとおりチェレンコフの名前を出しましたが、会計が通るどころかボスが死んだことが知れ渡っており、食事代を払うためにこの店で働くことになります。
調理場でオウムガイや三葉虫を連日連夜めったやたらにたたきつけ殺す作業で、客がくれば給仕も言いつけられるためヒョーはくたくたに疲れていました。
この体では逃げ出すこともできないと思っていたヒョーに、ある日店へやってきた男から「おまえ、歌手になってみる気はないか?」と声をかけられます。
そしてヒョーは歌手を目指します。
まとめ
放射能の影響を受け、新鮮なシーフードはなかなか手に入らず、防護服を着用しなければ外を歩くのにも危険な外の世界。
マフィアのボスにたっぷりと愛情をかけられ豊かな食材を与えられて育った泳げないアザラシのヒョーは、外の世界で様々なことを目にし、体験します。
レストランの店長にこき使われ、スタジオに出資しているという夫人とのやりとりが決裂し、さらに地下水路で放浪します。
地球の終わりに近い情景が次々と目の前に広がる中、ヒョーの淡々とした事実を眺める目やチェレンコフを失った悲しみにとの対比が読むものの心にくっきりと浮かび上がります。
ユーモアとともに絶望と悲哀を感じる、読後に深い余韻が残る物語です。
<こんな人におすすめ>
ペットのアザラシが荒廃した世界へ飛び出す冒険物語に興味がある
不合理な人間の世界をアザラシの目を通して描いた話を読んでみたい
一條 次郎のファン
け、けっこうグロいのね(・・;)
温室育ちのヒョーが懸命に
生きていく姿に胸アツ。
終焉を迎えるような世界の
景色と、ヒョーとチェレンコフの
絆の対比が鮮やかで物悲しい物語ね。
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