
こちらは不思議な図書館へと
やってきた女性が自分史を
書くことで自身の人生を
振り返り新たに向き合っていく
物語よ。

不思議な図書館て
いったいどんな場所なんだ?

たくさんの本があるのだけど
それは全て誰かの人生が詰まった
物語なの。そして図書館には
いくつかのルールが設けられているわ。

人の人生が並んだ図書館かあ!
そりゃすごい。ルールなんかも
特別なものがあるのかな。
『黒猫のいる回想図書館』柊 サナカ (著) ハーパーBOOKS+
あらすじ
結婚式をも空前にして、恋人から別れを告げられ、仕事も家もなくおまけに鞄まで盗られ不幸のどん底に落ちていた千紗。
路地裏にいた一匹の黒い猫から人生最悪の日ですか、と訊かれ、そうだと答えた千紗。
目を覚ますとそこは図書館だった。
多くの人々の「人生」が収められた不思議な図書館
本棚がたくさん置かれ、びっしりと本が並んだ図書館は、千紗が今まで見た中で最も大きな規模のものでした。
何故こんな所に自分はいるのかと首をひねりつつ、司書に出口はどこかとたずねると「こちらの図書館には、出口はございません」と言います。
驚く千紗に、司書はこの図書館についての利用方法を淡々と説明。
ここにあるのは、一冊一冊が誰かの人生であること、そして利用者には一冊の自分史を完成させてもらうこと、そして書き終わらなければこの図書館から出ることはできないこと…。
どうにか脱出できないかとトイレを探っていると「無駄だから。ここからは出られないよ」と少女に声をかけられます。
「アリス」と呼ばれる少女、40代後半か50代前半の「マダムT」と呼ばれる女性から「お茶会」の時間にこの図書館について色々と聴き出します。
皆からスミクロと呼ばれる黒猫に人生最悪の日かと訊かれイエスと答えてこの場所へやってきたこと、そして「館内ではお静かに」「本を傷つけないように」というルールを破ると司書に影を踏まれること。
影を踏まれると動けなくなり、影も自分の存在も薄くなっていき、やがて消えてしまうのだとか。
さっさと書き上げて元の世界に戻らなくてはと千紗は決意するのですが…。
まとめ
様々な事情を抱えて人生最悪の日を体験して図書館へとやってきた年齢も性別も様々な人々。
その最悪もひっくるめて自分の人生を見つめ直し、自分が何を感じてどう生きてきたのかを考えながら、自分の本に文字を埋めていきます。
「書く」という行為には、自分の内面や、言葉にできない思いを素直に表面に出す作用があるようです。
千紗自身も本に向き合いながら自分自身と対話し、これまでの道とこれからの道を見出していきます。
個性豊かな面々とのやりとりや育まれていく絆に胸があたたくなり、自分史を作ってみたくなったり、自分の人生を愛おしく感じたりする物語です。
<こんな人におすすめ>
人生最悪の日に黒猫に導かれて不思議な図書館に行く物語を読んでみたい
自分史を書き上げるまで出ることのできない図書館での人との出会いや気づきを描いた話に興味がある
柊 サナカのファン


こんな機会がないと
自分の人生にじっくりと向き合う
ことってないのかもしれないな。
ちょっと行ってみたい気もする。

『書く』という行為を通して
いつの間にか見えなくなったり
忘れてしまったりしていた
自分の根幹に気づけるのかも
しれないわね。
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