こちらは幸せとは言えない
状況の中で出会った二人の
女子大生の友情と生き方を
描く物語よ。
幸せとは言えないって
どういう状況?
主人公の陽彩は母と二人暮らし。
生活費と学費費を稼ぐために
毎日バイトをしているわ。友人も
遊ぶ時間もないの。
遊んだりするのが楽しい
頃だろうになあ。そんな彼女が
出会った相手ってどんな人物なんだろう?
『愛されなくても別に』武田 綾乃 (著) 講談社文庫
あらすじ
大学生の宮田陽彩は母親と二人暮らし。
学費と家に入れるお金を稼ぐため毎日コンビニでアルバイトをしている。
浪費家の母親の顔色を伺いながら家で生活し、友人もなく、遊ぶ時間もない。
そんな日々を送る陽彩の日常は、父親が殺人犯と噂される同級生・江永雅と出会ったことで劇的に変化する。
苦しみの中から人生に大切なものを選びとっていく若者たちの姿を描く物語。
「幸せ」とは言えない二人の出会いと友情
小学一年生の時に両親が離婚し、父親とは音信不通。
以来、母と二人で暮らしてきた陽彩は、大学の学費と毎月家に入れる八万円を稼ぐためにコンビニでバイトをしています。
少しでも多くお金を手に入れたいと深夜シフトも入れ、朝方帰ると母のために朝食を作り、家事をこなします。
ブランド物に身を包みゲームに課金、陽彩の作った朝食を「お腹いっぱい」と残す母。
そして出かける前には「愛してるわ、陽彩」と必ず言います。
コミュ力も時間もない陽彩は友人がいません。
しかし授業のノートを誰かに借りなければならなくなり、教室でいつも一人でいる木村という女学生に声をかけます。
生真面目そうな彼女との会話から江永雅という同級生の存在が話題にあがります。
彼女の父親が殺人犯らしいという噂を聞き驚く陽彩。
同じバイトながらろくに話したことのなかった雅のことが気になり、シフトが一緒になった時に話しかけます。
母とのこと、暮らしぶりなどを話すと奨学金の口座にそのお金が入っているのかと雅に聞かれます。
何を言っているのかと思いつつ、気になった陽彩は母の出勤後、自分の通帳を開きます。
定期的に奨学金が振り込まれているはずのその残高はたったの三万円。
おまけに父親からも教育費が振り込まれ続けていたことも判明。
陽彩は家を出て雅の部屋に転がり込み、二人で暮らし始めます。
まとめ
愛、お金、友情、家族。
存在するのがあたりまえのように感じるものもあれば、足りなくて苦しむものもあります。
陽彩が求めた愛情をお金に変えて搾取し続けてきた母親。
その事実に気付きながらもその手を離せずにいた陽彩を救ってくれたのはやはり親に苦しめられてきた雅でした。
つらい思いを抱き続けてきた不器用な二人が寄り添い、互いの苦しみをわかち合い、共に生きることの喜びを感じていく。
そんな彼女たちの苦悩と喜び、そして友情を描いた、読後に深い余韻が残る物語です。
<こんな人におすすめ>
家族に搾取され続ける女子大学生が友人との出会いで変わっていく物語に興味がある
家族、友人、お金、愛など本当に大切なものは何なのかを問う作品を読んでみたい
武田 綾乃のファン
友と出会えたことで
親の呪縛から抜け出せたんだな。
今の時代、身近にこんな子たちが
結構いるんじゃなかろうか…。
家族が絶対ではないという
苦しみはあるけれどそれを
自分自身が認めたことで
唯一無二の友情に出会えたのかも
しれないわね。
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