スマホを拾っただけなのに

『スマホを落としただけなのに 戦慄するメガロポリス』

志駕 晃 著  宝島社文庫

あらすじ

都内の清掃人派遣会社に勤める有希は、昼休みに公園のベンチでスマホを拾う。落とし主と連絡がつき、無事にスマホを返すことができたのだが、その日から有希の周りで奇妙な出来事が起こりはじめる。一方、刑事の桐野は東京オリンピックを控え、サイバーテロ対策のために、内閣サイバーセキュリティセンターに出向していた。しかし、「センター内にスパイがいる」という手紙が桐野宛に届く。

人気シリーズ第三弾!!

映画化もされている「スマホを落としただけなのに」シリーズの第三弾。脱獄した連続殺人犯の浦井が、北朝鮮の保護を受け、東京オリンピックを標的としたサイバーテロを仕掛ける、という情報が入ります。神奈川県警サイバー犯罪対策課の刑事、桐野はテロを防ぐことができるのでしょうか。また、浦井を逮捕できるのか。

スマホを拾った有希に起こる出来事とは

OLの有希は公園のベンチでスマホを拾います。突然鳴り出したスマホに迷いつつ電話に出て、持ち主に無事スマホを返すことができました。なかなか感じの良い男性でしたが、もう会うこともないだろうと思っていた有希。その後、同棲している彼氏の浮気が発覚、そして「別れてくれ」と言われます。

一方的な別れに茫然自失としていた有希。何とか家を出て訪れたDVDレンタルショップで、スマホの落とし主・瀧嶋と偶然再会します。第一印象の通り、好感の持てる男性で、瀧嶋の方も有希に好印象を抱いていたようです。二人はほどなくして一緒に住み始めます。しかし、有希はちょっとした違和感を感じ始めて…。

連続殺人犯の浦井をおびき寄せる

内閣サイバーセキュリティーセンターに出向していた桐野は、公安の兵頭に呼び出されます。兵頭の狙いは、北朝鮮に潜伏していると思われる連続殺人犯の浦井をおびき出すことでした。そのため、浦井に殺される寸前だった事件の被害者、麻美に協力を請うと言うのです。半ば脅しのようにして、個人の安全よりも国益を優先させるかのような兵頭のやり方に待ったをかけつつ、落とし所を探りながら麻美の協力を得ることになった桐野。果たして浦井は、麻美につられて出てくるのでしょうか。

大臣のスマホ情報を盗む女性

夜の店で働くある女性は、大臣や要職につくお客のスマホを預かり、充電すると言ってはスマホ内のデータを盗むことを繰り返していました。竜崎という男から依頼され、実行するとお金をもらえるのです。お金に困っていた女性は、かなりまずいことをしているのではないか?と不安に駆られながらも、断ることができずにいます。この女性の正体も終盤まで明らかにされず、気になるところです。

北朝鮮での浦井の様子

北朝鮮でVIP扱いを受け、日本へのサイバーテロを依頼される浦井。その浦井に秘書のような形でついたのが淑姫。浦井の行動を監視する役目でもありますが、仕事に関してプロフェッショナルな彼女にも、浦井の行動は不可解に映るようです。それでも浦井の要求を粛々とこなしていきます。

まとめ

スマホを拾った出会いから、不審な出来事に巻き込まれていく有希、父の会社の状況も厳しく、自分の仕事の給料もなかなか上がらない、とため息をつく桐野の彼女、美乃里。色気があって優秀な内閣セキュリティースタッフの女性。それぞれに問題を抱えた、魅力的な人物たちが登場し、入り組んだ展開で読者を翻弄しながら、見事に騙してくれます。

恋人への不信感、スパイ協力への不安と罪悪感、日本という国のサイバー攻撃に対する脆弱性、連続殺人鬼の不可解なパーソナリティ、公安という組織の謎。多くの見所が混乱することなく展開していく筆力は見事なものです。事件解決か!と見つめていたら足元の梯子をいきなり外されたような、驚愕のラストにも大注目の、サスペンスミステリーです。

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