こちらは江戸時代、父が
行方不明となってしまった十一歳の
助松が、父の残した万葉集の歌を
手がかりにして探し出そうとする物語よ。
万葉集かあ。
お父さんはどんな仕事をしていて
なぜ行方不明になったんだ?
薬問屋の手代をしていた父親は
富山に出張に行き、そのまま
消息を絶ってしまったの。
そりゃあ息子の助松も心細いだろうし
心配だよな。それに、万葉集の謎も
気になるな。
『からころも 万葉集歌解き譚 』
篠 綾子 (著) 小学館文庫
あらすじ
もうすぐ十一歳になる助松の父・大五郎が行方不明となって一年半になる。
大五郎が手代を務めていた薬種問屋・伊勢屋の小僧となった助松は、父から誰にも見せぬように、と言われた日記を預かっていた。
日々の記録のほか、万葉集の和歌も綴られており、その歌の意味を伊勢屋の娘、しづ子や、客である葛木多陽人らが教えてくれた。
そんなある日、しづ子が誰にも声をかけずに家を出て、行方不明となる。
しづ子の失踪にはどうやら大五郎も関係するようで…。
父一人、子一人であった大五郎と助松。
しかし、大五郎は富山へ出かけたきり、行方不明に。大五郎が助松に預けた日記には、いくつかの万葉集の歌が綴られていました。
師について学んでいるしづ子に歌の意味を解説してもらったり、また、道行く人が振り返るほどの美青年、葛木からも歌の解釈や狂歌について教えてもらい、歌の世界に親しんでいきます。
ある時、ふとしたきっかけで大友主税と名乗る侍と知り合いになったしづ子と助松。
その交流を深めていくうちに、しづ子が行方不明になります。そして届けられた文にはしづ子の筆跡で「十年前、富山にて起こりしこと、明らかにすべし」とあり…。
まとめ
謎の多い大五郎の出自、大五郎と関係を持つと思われる大友主税、美しく博識で多様な術も使いこなす葛木。
魅力的な登場人物たちが己の運命と戦い、その思いを古の歌に重ねていきます。
万葉集の新たな魅力を感じられる物語です。
<こんな人におすすめ>
万葉集をモチーフにした江戸時代のミステリに興味がある
個性豊かな登場人物がおりなす江戸の謎解きを読んでみたい
篠 綾子のファン
親子の情を細やかに描きつつ、
万葉集の知識を学ぶことができ、
そして葛木の驚きの活躍ぶり!!
おもしろいな〜!!
古の人々が歌に込めた思いが
今も伝わってくるようだわね。
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