こちらは今の状況に流され、
とどまり、もがく男女の
苦しさと切なさを描く連作短編集よ。
その男女はどういう状況に
あるんだ?
生涯の恋人に12年ぶりに再会した女性、
祖母の庇護下から外へと踏み出した
女子中学生などね。
なるほど。なにかドラマが
起こりそうだな。魚をイメージさせる
タイトルの意味も気になるぞ。
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
町田 そのこ (著) 新潮文庫
あらすじ
思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、生まれ変わる同級生の様子を見守るひととき、救いようのない状況で求める変わらぬ思い。
水の中で漂い、停滞し、もがく男女の苦しさとせつなさを描く5編の短編集。
さっちゃんの恋
団子を食べて差し歯が取れてしまったさっちゃん。
のほほんとした雰囲気をまとう彼女は、この差し歯をすることになった過去を思い出します。
そして、そのきっかけを作った彼と、歯医者の前で十二年ぶりに出会います。
家に来るようにと彼を誘うさっちゃんですが…(「カメルーンの青い魚」)。
同級生の変化を眩しく見つめる
同級生にからかわれ、いつも祖母の陰に隠れていた中学生の晴子が、男子の顔をを殴りつけます。
それを見ていたさっちゃんの息子・啓太は驚き、そして晴子は孵化したのだ、と感じます。
祖母という、自分を守る殻を破ったのだと。
母子家庭であり、早く一人前になりたいと願う啓太は晴子に共感します。
二人は互いに理解を深めるのですが(「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」)。
まとめ
この場所では生きられない者、この場所でしか生きられない者たちが、水の中で息苦しさを感じたり、もがいたりしながら懸命に前へと進んでいきます。
時に生きる場所を変えたり、自分自身を変えたりしながら、最後は海へと帰り、そして海から始まるのです。
「それでいい」と苦しみにそっと寄り添ってくれるような、心に染みいる物語です。
<こんな人におすすめ>
苦しみを抱えた人々が明日へ向かって歩き出す話を読んでみたい
生きることに息苦しさを感じている
町田 そのこのファン
似たような経験をしたことが
ないのに、こんなにを胸を
打つのはどうしてなんだろうな(´⌒`。)
その切なさや苦しみがやさしく
描かれているからかも。
苦しみを抱えながらも
どこかユーモアを漂わせた
心に残る物語ね。
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