nuko

イラストブックレビュー

嘘で育つ木を手にした少女の闘いと成長の物語

19世紀のイギリス。高名な博物学者であるサンダリーとその家族たちはヴェイン島へやってきた。父が不審な死を遂げ、何者かに殺されたのではと考えたフェイスは、真相を見つけるため父の荷物を調べるが、そこで見つけたのは父の手記と、嘘を養分にして育つという不思議な木だった。
イラストブックレビュー

この世界はいったい何なんだ!?説明に困る面白さ

社長の出張中、猫の世話を頼まれた。体長約10センチ。その名も「テノリネコ」。この小さな可愛らしい動物にはある性質があって…(「テノリネコ」)。ちょっと変わった動物たちが繰り広げるユーモラスで奇妙な7つの物語が世界の裏側へと読者を誘う。
イラストブックレビュー

近くに大切な人がいることに気づくのは極上の幸せである

作家として仕事を続け、そこそこ売れるようになった50歳の正吉は、一軒家でほぼひきこもりの生活をしている。その家に突然、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子・永原智がやってきた。世間知らずの父親と、明るくて要領が良い息子の、奇妙な同居生活が始まる。
イラストブックレビュー

小さなひとつの出来事が時を超えてつながっていく

妻を事故で亡くした佳祐は悲しみの淵に沈んでいた。妻との会話を思い出し、自転車で後ろ向きに下ると時間を遡れるという坂へやってきたのだが(「さかさまさか」)。『時間』をテーマに不思議であたたかなつながりを描く五つの短編集。
イラストブックレビュー

人情に包まれて成長していく文庫売のお江戸捕物帖

十六歳の北一は暦本や読本を入れる厚紙製の箱、文庫を振り売りしている。千吉がなくなり、差配人のはからいで「富勘長屋」へ居を移し、文庫屋として一人立ちすることを夢見ている。江戸の町で起こるやっかい事を、千吉のおかみさんや仲間たちに助けられながら解決していく。
イラストブックレビュー

青春の燦きと闇が生む 証明不可能な罪

北楓高校ではひと月の間に三人もの生徒が自殺するという事態が起こっていた。ひとりは学校のトイレで首を吊り、ふたりは校舎から飛び降り、命を落とした。犯人は『他人を自殺させる力』を持つらしいのだが…。
イラストブックレビュー

一線を退いたからこそ見えるもの、できることがある

巣鴨町に店を構える糸丼屋の嶋屋六代目の主、徳兵衛は還暦を迎え、隠居を決意。のんびりと優雅な暮らしをするはずが、孫の千代太が遊びにくるようになってからというもの、次から次へとやっかいごとが起こる。隠居は、すごろくで言えば人生の「あがり」と考えていた徳兵衛。果たして第二の人生に「あがり」はあるのか。
イラストブックレビュー

世界の柔らかな境目に触れるSF短編集

いくつもの平行世界を自由に行き来する少女たちの前に現れた異質の存在とは(「なめらかな世界と、その敵」)。時の流れと人の心の隔たりと繋がりを描き出す、六つの物語。
イラストブックレビュー

女たちが手を携えたとき 反撃の幕が切って落とされる

開業医の川辺は39歳。妻のカオルは公立病院の勤務医をしており、同じ病医院に勤める医師と浮気をしている。川辺は妻や浮気相手に対する嫉妬や劣等感が頂点に達すると、一人暮らしの女性の部屋に侵入。昏睡させ、レイプする行為を繰り返していた。被害者女性たちは二次被害を恐れ、口を閉ざしていたが、ネットを介して偶然つながっていく。
イラストブックレビュー

おひとり様専用カフェで心癒されるひとときを

ごくありふれた住宅地位の奥、鬱蒼とした木々に囲まれた小さなカフェ、「喫茶ドードー」。おひとり様専用のこの店には様々なお客がやってくる。変わらない価値観を押し付けられたり、新しい価値観の変化を強要されたりして疲れてしまった彼女たちの心と体をやさしく癒してくれる空間がここにある。