こちらは美味しい食べ物と
それにまつわる景色を描く
7つの短編集よ。
おいしい食べ物、いいねえ。
どんな食べ物が出てくるんだ?
ぶたばら飯、かき氷、味噌汁、
きりたんぽ鍋など。お店で食べる
ものもあれば、家で作る料理もあるの。
うまそうだな。この食べ物たちで
どんなドラマがうまれるんだろう?
『あつあつを召し上がれ』小川糸 (著)新潮文庫
あらすじ
舌の合う恋人とデートで訪れた中華街で食べる、彼のお気に入りの「ぶたばら飯」、幼い頃に母に教えられたみそ汁の作り方、亡くなった父を偲びながら、父の好物であるきりたんぽ鍋を母と二人で食す。
時に甘くやさしく、そしてちょっぴり切ない思いも運ぶ、7つの食卓の風景をおさめた短編集。
おいしい食べ物が心に与えるもの
付き合いはじめて半年の二人。
彼の父親が気に入っていたという「中華街で一番汚い店」にやってきて、料理を注文します。
シュウマイもふかひれのスープも素晴らしい味です。
最後に出てきたぶたばら飯には言葉にもならず、ただひたすら夢中でほおばる彼女。
そんな彼女を見た彼は「話がある」と切り出します(「親父のぶたばら飯」)。
余命宣告を受けた母は、幼稚園児だった私におみそしるの作り方を特訓。
おかげで母が亡くなった後も父と二人、不自由なく暮らします。
私の結婚が決まり、この家の娘として最後に作ったみそしるを飲みながら、母がみそしるを教えてくれた本当の理由を父から聞いて…(「こーちゃんのおみそ汁」)。
鍋奉行だった父が亡くなり、父の話をしつつきりたんぽ鍋を作る母と娘。
しかし、出来上がった父自慢のはずのきりたんぽ鍋はひどい味で…(「季節はずれのきりたんぽ」)。
まとめ
つらいときでも、うれしいときでも、そこに誰かのことを思うおいしい食べ物が出てきたら満たされるような感覚になります。
作った記憶、食べた記憶を体と心と頭に取り込んで、明日へ歩き出すエネルギーに変換していくのかもしれません。
お腹も心も満たされていく、おいしい短編集です。
<こんな人におすすめ>
おいしい食事と人生の機微を絡めて描いた物語を読んでみたい
心がじんわりとあたたかくなるような、やさしい話が好き
小川糸のファン
空腹と感動が同時に味わえるな。
香りまで漂うような描写に
食欲がそそられるわね。そして
ホロリとさせるエピソードにも
心が温かくなる物語ね。
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