こちいらは日常の小さな
一コマから生まれる違和感を
描き出す短編集よ。
ほほう。日常の違和感か。
例えばどんな?
地域猫に餌をあげていた奥さんが
入院。その間、向かいの奥さんが
餌をくれていたようなのだけど
退院してみると猫の姿はなくて…。
えっ??向かいの奥さんが
あげていたのはひょっとして…?
『駐車場のねこ』 嶋津 輝 (著) 文春文庫
あらすじ
駐車場にやってくる地域猫に餌をあげていた布団屋の民子。
腰を痛め入院するが、どうやら向かいのふぐ料理屋のおかみが民子のかわりに猫へ餌をあげているらしい。
やがて、夫が体調を崩し、猫の姿は見えなくなり…(「駐車場のねこ」)。
母親の家に行く途中の米屋で弁当を買う男と無愛想な店の娘、時々幻覚を起こす男を見守る商店街の人々と地元の女子大生など、日常の一コマから生じる違和感を描きだす、心あたたまる短編集。
ふぐ屋のおかみが猫に与えていたもの
向かいのふぐ屋の隣のコインパーキングにやってくる地域猫へ、餌をあげている布団屋の民子。
一度ふぐ屋の料理人には店先で餌をやるなと怒鳴られたことがありますが、夫の治郎が「地主も認めていることだ」と取りなしてくれました。
ふぐ屋のおかみさんとも会話をしたこともなく、ふぐ屋とは何となくぎくしゃくとした関係です。
そんなある日、民子が入院することに。
猫を心配する民子に、ふぐ屋のおかみが餌をやっているらしいと治郎から聞きます。
退院が近づいたある日、近所の人から治郎が突然吐き、救急外来で点滴を打っているとの知らせが。
聞けば治郎はふぐ屋のおかみから差し入れを受け取っていたとか。
嫌な予感に捉われた民子が退院後パーキングを見ると、猫の姿はなくて…。
まとめ
静かな日常の一部を切り取り描かれる物語は、どれも「普通」のようで「普通」ではありません。
ちょっとした違和感や不信感が心地よい着地点にふわりとたどりつきます。
思いもよらない角度から投げられる違和感と、その正体を見つける人の心のあたたかさに笑みがこぼれる短編集です。
<こんな人におすすめ>
不穏に感じるやりとりがあたたかなものに変化を遂げていくような物語に興味がある
誰もがその人だけの「個性」を持っているのだと感じられる話を読んでみたい
嶋津 輝のファン
え、なにこれ…ってザワザワ
した後の結末にほっこり感が
増すなあ(*^▽^*)
さりげない気遣いや思いやりは
時にわかりづらいことも。それが
違和感となって見えるのかも
しれないわね。
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