こちらは占いをテーマに
自分の問題に直面し進むべき
道を見出していく女性たちを
描いた短編集よ。
占いかあ。女性は好きそう。
どんな人が占いをしに来るんだ?
時代は大正。一般向けの占いが
まだ珍しい時期のようよ。
同棲相手の本当の気持ちが知りたい
翻訳家の女性が真実を求めて
何度も占いに通うの。
どの時代でも恋の悩みは
変わらないんだな。その女性は
占いで何かを得たんだろうか。
『占』 木内 昇 (著) 新潮文庫
あらすじ
咲山町の一軒家に、翻訳の仕事をしながら独りで暮らしていた桐子は、家の修繕に来た大工の伊助と深い仲になる。
伊助には生き別れとなった義妹がおり、何よりも大切なのだと言います。
それでは自分の存在は何なのかと怒り、悩む桐子は時追町の占い館で伊助の気持ちを見てもらうのだが…(「時追町の卜い家」)。
また、日々平穏に暮らす政子は近所の人々にうらやましがられるほど家庭が凪いでいる。
しかし本当にそうなのかと気になった政子は近所の家庭の噂話を集め、比較する格付け表を作成。
その表を見たいという客が何人か現れ、やがて近所の噂になり…(「深山町の双六堂」)。
「占い」から欲しいものを求め、振り回され、混乱しながらも、自分なりの真実を見つけ力強く生きていく女性たちの姿を描いた短編集。
知りたいのはあの人の心の中
歳の離れた若い伊助とふとしたきっかけで深い仲となった桐子。
何よりも義妹が大切で、見つけ出したらいいっしょに住むのだ、と悪びれずに口にする伊助に対し怒り苛立つ桐子は、目にした「卜」の文字が目に留まり足を踏み入れます。
汀心と名乗る八卦見の見立てによれば、相手は厄介ごとに巻き込まれているが、桐子のことを好いている。
彼を支えてあげることが肝要だ、とのこと。
この言葉ですっかり憂鬱が消え、身体が軽くなった桐子。
彼を支えるのだ、と意気揚々と帰ったが伊助とのやりとりの中で「もうここには来ないで」と彼に言ってしまいます。
翌日から後悔の念に駆られて再び占いの館を訪れ、別の八卦見に見てもらいますがその内容に納得がいかず、何度も館に足を運び…(「時追町の卜い家」)。
真面目な夫、優しい姑、聞き分けの良い二人の息子と恵まれた家庭で暮らす政子。
波風一つ立たず平凡である状況が良いものなのかと疑問を感じた政子は近所の家庭を、収入や夫婦仲、子供の出来など項目ごとに評価をつける表を作成し、自分の家庭と比較しようと考えます。
ところがこの表を見たいという客が現れ、さらにこの表のことが近所の人々にバレたようで…(「深山町の双六」)。
まとめ
知りたい情報を求めて得たはずなのに、さらに深みへとはまっていく女性たち。
しかし、「答え」を手に入れたいと思ううちは期待する結果は得られないものなのかもしれません。
占いに振りまわされたその経験から自分の軸を見つけ出し、逞しく生きていく女性たちの姿を描いた七つの短編集です。
<こんな人におすすめ>
占いが好き
恋愛や仕事の悩みを占ってみてもらいたいと思ったことがある
木内 昇のファン
うわあ〜 占いに
振り回されちゃってるな!!
でもこの展開を見ると、彼女たちに
とってはある意味必要だったのかも。
占いがテーマだけれども
死者の口寄せや、愚痴や悩みを
消す「喰い師」、読心術など
様々な能力の人々が登場するのよ。
彼らのとの出会いで女性たちの悩みが
どう変化していくのかも見どころの物語ね。
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