こちらは前作『深夜の博覧会』に続く
昭和ミステリシリーズ第二弾よ。
終戦後の混乱期、高校三年生の男女が
殺人事件に遭遇するの。
戦後かあ。当時の価値観とか
雰囲気とかどんな感じなんだろう?
学制改革により、これまでなかった
高校三年生が新たに設置されることに
なったの。また男女別学だった彼らが
共学に対して戸惑う姿も見られるわ。
へええ!!今の時代からすると
なんだか新鮮だな。
彼らがどんな事件に遭遇し、
どんな結末を迎えたのか、気になるぜ。
『たかが殺人じゃないか: 昭和24年の推理小説』
辻 真先 (著) 創元推理文庫
あらすじ
終戦から四年が過ぎた昭和二十四年。
学制改革により風早勝利の学年は最後の一年を男女共学で過ごすことになった。
推理作家を目指し、推理小説研究部の部長を務める勝利は、顧問の別宮操の勧めにより、映画研究会と合同で合宿を行うことに。
顧問と男女生徒5名で向かったのは湯谷温泉。
そこで彼らは密室殺人事件に遭遇する。
さらに台風が襲来した夜、撮影のために学校隣りの廃墟へと集まっていた彼らは新たな死体を発見する。
彼らは各々推理を働かせるが、果たして真相にたどりつけるのか。
戦後の混乱期と若者のみずみずしい青春を描き出すミステリ。
最後の高校生活で出会った不可解な殺人事件
中学校・女学校を五年で卒業していた旧体制が変わり、六三三の学制になったことで、旧制中学を卒業した勝利の学年は高校三年に編入することに。
また、これまで男女別学であった学び舎は男女共学となり、異性と机を並べて学ぶことに生徒たちは戸惑いを隠せません。
しかし、同じ教室で活動する推理小説研究部と映画研究部の男女メンバー四人は活発に議論を交わす仲。
そこへ転校生の咲原鏡子が両方の部に加入する形で参加。
顧問の操の図らいで、生徒五人と操の計六人で合宿することに。
出向いた温泉地で、ロケ地となるような場所を散策していた一行は、地元の木地師が考えたという建て売り住宅の中で死体を発見します。
玄関の鍵はかかっており密室状態。
さらに夏休み、学校隣りの廃墟に集まったメンバーたちは、学園祭で発表するための作品を撮影していました。
台風の中、撮影を終えた一行は死体の生首を発見。
勝利は一連の出来事を推理小説にして残そうと考えますが事件の謎はなかなか解くことができません。
そこへ操の知人だという那珂一兵が探偵役として呼ばれます。
事件の推理に乗り気でない様子の一兵が導き出した、一連の事件の真相とは。
まとめ
戦後の混乱期、新しい制度に戸惑う若者たちや復興に向けて人々が発するエネルギー、命に対する価値観など当時の様子が鮮やかに目に浮かんできます。
これまでの価値観が覆される中で笑い語り、恋をし、推理する若者たちと、時代に翻弄された者の悲しみを描くミステリです。
<こんな人におすすめ>
昭和24年の高校を舞台にしたミステリを読んでみたい
高校生が不可解な事件に挑む青春ミステリに興味がある
辻 真先のファン
でええっ!?犯人が意外すぎる…
そして登場人物たちが大人に
ならざるを得ないような
切ない青春物語でもある。
世の中も価値観も変わっていく中で
立ち向かっていく若者たちと
その時代に翻弄された者の姿が
対照的に描かれる昭和ミステリね。
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