
こちらは塾講師をしているバードが
生まれてきた子供の姿を見て
様々な思いに悩み、葛藤する姿を
描く物語よ。

子供はどんな状態で生まれてきたんだ?

脳ヘルニアで頭が二つあるような
姿をしていたの。そんな我が子を見て
動揺したバードは愛人のもとへ逃げ込み
子供が手術するべきかどうか悩み苦しむの。

ううむ。悩み苦しむのはわかるが。
現実から目をそらさずに親として
なんとかしてほしいな。
『個人的な体験』大江 健三郎 (著)新潮文庫
あらすじ
広大なアフリカの地をいつか旅してみたい。
そんな夢を抱いていたバードだが、生まれてきたわが子を見て恐怖感に囚われた。
脳に異常を持った嬰児は大学病院へと移されるが、息子の死を願いながら旧知の友人、火見子と体を重ね、自ら禁じていた酒に手を出し、背徳と絶望の日々を送っていた。
わが子にふりかかる運命を受け入れることに迷い、その生と死の間で揺れ動く様を描く物語。
わが子の運命を受け入れられない男が選んだ道
尊敬する教授の娘と結婚したバードは予備校の教師をしている二十七歳。
一時期酒をひたすら飲み続けるようになってしまったのですが、その理由は自分でも良くわかっていません。
アフリカ旅行を夢見て地図や書籍を購入し、かの地への思いを馳せます。
妻が出産し、産院へ駆けつけたバードは脳ヘルニアで頭が二つあるような姿のわが子を見て愕然とし、続けて恐怖感に襲われます。
息子は大きな病院に移され入院し、予後を見て手術の可否を判断するとのこと。
赤ちゃんの体力によっては手術前に命を落とすこともある、という医師の言葉にバードはすがります。
古い友人で、現在は寡婦として奔放な暮らしを送っている火見子のもとをたずねたバードは、彼女に事情を話し、避けていた酒を飲みます。
夫に自殺された過去を持つ火見子は彼に同情し、自分の体へと導きます。
入院中の息子はバードの願いもむなしく順調に体力をつけ、病院から手術を提案されます。
思わぬ事態に動揺するバード。
手術を受け、その見た目は改善するのか。
他の子どもと同じように成長する可能性はあるのか。
不安だらけの未来を持つこの息子を育てていけるのか…。
バードは「手術はしません。退院します。」と医師に告げ、火見子の知り合いの闇医者のもとへと赤ん坊を通れていき…。
まとめ
自分自身から逃げ続け、時には酒に、時にはアフリカを思うことで何とか保ってきたバード。
異常を持って生まれてきたわが子を目の前にして、逃げ場がないと感じながらもやはり向き合うことができずに火見子に助けを求めます。
孤独な魂はいっとき共鳴しますが、それは一部分でしかありません。
何のために逃げるのか。
守りたい自分とは何だ。
バードが自分自信に問いかけたとき、揺るぎない答えに辿りつくのです。
<こんな人におすすめ>
自分の人生から逃げている男性の姿を描いた話に興味がある
我が子の運命を受け入れられず葛藤する男の話しを読んでみたい
大江 健三郎のファン


何を守るために逃げるのか。
それに気づいた時、バードは
ようやく逃げることをやめる
決意ができたんだな。

親としての覚悟を得るために
その葛藤や逃亡は彼にとって
必要なことだったのかも
しれないわね。
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