こちらはある女性が虐待を
受けている少年と出会い
交流を重ねていくお話よ。
虐待!痛ましいな。
女性のほうはどうやってこの少年と
出会ったんだ?
亡くなった祖母が住んでいた
田舎の家に移り住んでくるの。
彼女もまたつらい人生を歩んで
きたのよ。
なるほど。だからこそ
引き合う部分があったのかも
しれないな。二人はどんな風に
関係を築いていくんだろう?
『52ヘルツのクジラたち』町田 そのこ (著) 中公文庫
あらすじ
親から自分の人生を搾取され続けてきた女性・貴湖は祖母がかつて暮らしていた大分の家に移り住む。
遠慮や慎みのない田舎の人々とあえて距離を置くようにしていた。
そんなある日、貴湖は一人の少年と出会う。
喋ることができないこの少年と交流を重ね、自身の過去と向き合いながら、貴湖はこれまで考えることのなかった未来へと一歩を踏み出していく。
愛を得ることのできない苦しみを持つ者たち
再婚後に生まれた弟を溺愛した母は、貴湖にはろくな食事もさせず、身の回りのものも最低限しか与えませんでした。
高校卒業後就職が決まっていた貴湖ですが、病気の義父の介護を命じられます。
就職はなくなり、1日中介護する生活を送る中、義父が誤嚥性肺炎で入院。
母親は「こいつのせいよ。こいつが代わりに死ねばいいんだ」と貴湖に向かって言い放ちます。
その言葉で心をつないでいた細い糸ががぷちんと切れた貴湖はふらりと病院を出たところ、高校の同級生・美晴とその同僚のアンさんこと岡田安吾に遭遇。
アンさんは貴湖を家族から救い出し解放してくれました。
仕事先も見つかり恋人もできた貴湖は、彼をアンさんと美晴に紹介します。
しかしアンさんは彼のことを快く思っていない様子。
頼り甲斐のある彼との関係に少しずつ歪みが生じていることを感じ始めた貴湖ですが、自分からはどうすることもできません。
彼がアンさんを傷つけたことを謝ろうと向かった貴湖が目にしたものとは…。
治ったはずの傷の痛みに苦しむ貴湖を心配そうに見てくれた少年は、母親から虐待され「ムシ」と呼ばれていました。
喋ることのできないこの少年の、声ならぬ声の響きを感じた貴湖は、彼のために何かできないだろうか、と考えます。
まとめ
親から虐待され、搾取されたり、まるごと自分の存在を否定される苦しみや悲しみはとても深く、はかり知れないものがあります。
周波数が異なるために自分以外に届くことがなくても自分の音を発し続けるクジラ。
異なる種である人間がそれを発見したように、誰かが声ならぬその声を受け取ってくれる。
そんな誰かが存在するという事実がこの世を生きるための強い支えとなってくれる。
そんな風に感じる、切なさと苦しみ、そして感動の涙が止まらない物語です。
<こんな人におすすめ>
愛を得られず苦しみ絶望する者たちを描く物語を読んでみたい
苦しみを得た者同士が声にならぬ声を聴き心を通じていく物語に興味がある
町田そのこのファン
うあ゙ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゙ぁあぁ゙ああぁぁ
苦しぃぃぃぃぃ〜〜!!!!
だからこそこの絆は尊い。
声ならぬ声を聞き取って
くれる存在があるのだという
ことが生きていくための
支えになるのね。
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