こちらは夜行バスを利用する
人々が、ちょっとしたやりとりから
彼らの人生が交わっていく物語よ。
夜行バスかあ。今はトイレが
ついていたり席がゆったりして
いたりしてなかなか快適らしいな。
そうね。そんな夜行バスを
利用する人々はいろんな
事情を抱えていてそれが
ちょっとした謎を呼ぶのよ。
ほほう。夜行バスに乗り合わせた客の
ちょっとした謎か。気になるぜ。
『バスクル新宿』大崎 梢 (著)講談社文庫
あらすじ
遠く離れた地に住む大事な人へ会いに、話を聞きたい友人を捜しに…。
様々な思いを乗せて走る夜行バスは、新宿のバスターミナルへ、または家族が待つ遠く離れた場所へと向かう。
待合室で、バスの中でちょっとした出来事から言葉を交わす初対面の人々の人生が鮮やかに交わっていく。
深夜バスの客同士のふとしたやりとりから…
山形から新宿行きの夜行バスへ乗るために駅へ向かう葉月。
トイレで用を済ませていると、出口付近で電話をしている女性の声が聞こえてきました。
仕事を断っているようでしたが「今、函館ですよ」という言葉に驚きます。
電話の主は都会のOL風の女性。
ここは山形なのに何故?と思いつつ待合室へ。
年配の女性が夫らしき男性に、マスクを忘れたことについて責めています。
するとさきほどのOLが自分の分はあるからどうぞ、と年配女性にマスクをすすめます。
「袖振り合うのもたしょうの…」とつぶやいた葉月も会話に加わり、出発までの和やかなひとときを過ごします。
しかし、ここで葉月はOLをきつい目つきで見ている若い男性を発見。
こっそりとOLに確認するも、知らない人物だと彼女は言います。
バスは途中、一度サービスエリアに停車。
何となく窓の外を見ると、OLこと榎本さんが。
ところがバスの出発時間になっても彼女は戻らず、席は空いたまま。
運転手に確認を求めた葉月ですが、全員そろっていると言われてしまいます。
新宿に到着後、待合室で会話をした夫婦に声をかけ、榎本さんが消えた謎について話し合うのですが…。
まとめ
袖振り合うのも他生の縁。
そんな言葉がぴったりな物語。
人と人のちょっとした出会いが、その後の人生を大きく変えていくこともあります。
元書店員、老夫婦、モデル、大学生、元刑事とふつうなら関るはずのなかった人々が都会のバスターミナルを介して集まり、つながっていきます。
それぞれの、旅先での踏み込みすぎない、優しさを持った関わり方に心があたたかくなります。
旅をすること、出会うことで自分の生き方にもまた新しい道が加わる。
そんな風に感じる物語です。
<こんな人におすすめ>
深夜バスで同乗した人とのやりとりがきっかけで悩みや問題の答えを見つけ出す話に興味がある
高速バスターミナルを舞台に様々な人がゆるやかにつながっていく物語を読んでみたい
大崎 梢のファン
うわ〜 やさしい奇跡だな。
初対面の人間同士が、互いに
気遣い思い合う姿っていいもんだ。
こうした出会いだからこそ
相手の言葉がするりと
自分の胸に入るのかも。
旅というのは自分の新しい道を
見つけることでもあるのかも
しれないわね。
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